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公開日付: 2026年3月31日

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カシミア効果から生じる力を制御する新たな変数を発見
-極小デバイス開発へとつながる有限密度カシミア効果の定式化に成功-

図1 薄膜状物質中のカシミア効果

図1 薄膜状物質中のカシミア効果

青の点線は有限密度効果を考慮しない場合のカシミアエネルギーを、赤の実線は有限密度効果を考慮した場合のカシミアエネルギーを表しています。横軸は膜厚、縦軸はカシミアエネルギーに膜厚の2乗を掛けた量であり、いずれも化学ポテンシャルを用いて無次元化しています。縦軸の正負はそれぞれ斥力と引力に対応しており、ゼロを境に引力と斥力が切り替わります。


カシミア効果は、2枚の金属平板を数マイクロメートル程度隔てて配置すると、平板間の光子の零点エネルギーが変化し、平板間に微小な引力が発生する現象です。一見して何もない空間から生じる圧力として、物理学の分野ではよく知られています。近年、このカシミア効果の工学的応用であるカシミアエンジニアリングが注目を集めており、高精度の圧力センサー、制御性の高い微小バネ、低摩擦軸受などを搭載した極小デバイス開発への展開が期待されています。その際に重要となるのが、カシミア効果から生じる力の制御です。実際には、平板間の力に限らず、薄膜や微小な構造体の内部でもカシミア効果由来の力が生じ得るため、デバイス設計の観点ではより広い状況における力の制御が求められます。

私たちは、力を制御する変数として「電子密度」に着目しました。電子は、光子と異なり物質を構成するために、密度効果が重要となります。従来は平板の材質や形状が主な制御手段でしたが、いったん作製すると後から調整しにくいという課題がありました。一方で、零点エネルギーは温度によっても変化し、温度は調整しやすい変数の一つです。しかし、温度だけでは期待できる現象の幅には制限が残ります。そこで密度効果を理論に取り込み、薄膜状物質の内部に生じる電子由来の力が膜厚と電子密度(化学ポテンシャル)に応じて変化し、引力や斥力に加えて力がゼロとなる状態まで柔軟に制御できることを示しました。

 量子力学の世界では、たとえ力が加わっていなくても、粒子を完全に静止させることはできない。このとき粒子が持つ避けられない最低限のエネルギーを「零点エネルギー」と呼ぶ。

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP20K14476, JP24K07034, JP24K17054, JP24K17059)の助成を受けたものです。

著者情報
参考文献
Fujii, D., Suzuki, K. et al., Lifshitz Formulas for Finite-Density Casimir Effect, Physics Letters B, vol.868, 2025, 139758, 6p.
外部論文: https://doi.org/10.1016/j.physletb.2025.139758

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