JAEA R&D Navigator
トップページ >  先端原子力科学研究 >  磁場に“擬態”し自己再構築するカメレオン超伝導

公開日付: 2026年3月31日

アクセスカウント:0

categ3

磁場に“擬態”し自己再構築するカメレオン超伝導
-スピン三重項超伝導で臨界磁場が2倍に-

図1 超伝導を形成する電子対

図1 超伝導を形成する電子対

(a)スピン一重項(反平行,S = 0)、(b)スピン三重項(平行,S = 1)の電子対を示しています。

図2 UTe2の磁場(B )-温度(T )超伝導相図

図2 UTe2の磁場(B )-温度(T )超伝導相図

及びは超伝導転移点を示します。カラースケールはエントロピー変化に対応する指標を表します。そのため状態が切り替わる点で顕著に変化し、相境界を検出できます。低磁場超伝導相では、電子対のスピンの向きは特定方向に揃っていません。磁場を増加させると、緑の実線で示す境界において、スピンが磁場方向へ整列した強磁場超伝導相へ相転移します。

従来の超伝導では、超伝導を担う二つの電子が反平行スピンで対をつくり、総スピンは S = 0 となります(図1(a))。このため正味の磁化はゼロで、スピンは自由度を持ちません。一方、非従来型のスピン三重項超伝導では、ペアをつくる二つの電子スピンが平行に揃い、総スピン S = 1 の状態をとります(図1(b))。そのため、スピンの向きという自由度を持ち、外部磁場に応じて有利なスピン配向をとることが可能となります。一般にこの機能は強い磁場に対して超伝導が壊れにくい性質につながり、強磁場を発生させる超伝導マグネットへの応用も期待されています。

本研究では、スピン三重項超伝導体であるUTe2の強磁場下の性質を調べました。その結果、低磁場超伝導相では電子対のスピン配向が揃っていないのに対し、磁場を増加させると相転移を伴って、磁場方向にスピンが整列した強磁場超伝導相へと移り変わることを見いだしました(図2)。さらにそのスピン整列により、超伝導が破壊される臨界磁場は従来型超伝導における理論予測の2倍に達することを示しました。

本成果は、強磁場超伝導マグネット線材の開発指針を与えると同時に、非従来型超伝導が備えるスピン/軌道自由度が再構成されることで、カメレオンが周囲の色に溶け込むように磁場などの外部環境に適応する柔軟性があることを示しています。これは、非従来型超伝導に共通する一般的描像の構築に資する重要な知見です。

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP16KK0106, JP17K05522, JP17K05529, JP20K03852, JP24K00590, JP24KK0062, JP23H04871, JP23H01132, JP23K03332)の助成を受けたものです。

著者情報
参考文献
Tokiwa, Y. et al., Self-Reconstruction of Order Parameter in Spin-Triplet Superconductor UTe2, Physical Review Letters, vol.135, issue 13, 2025, 136502, 6p.
外部論文: https://doi.org/10.1103/z8yx-yzdh

このページへのご意見やご感想などありましたらボタンをクリックしてご意見ご感想をお寄せ下さい。

トップへ戻る