公開日付: 2025年 12月 19日
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少数データから多数データを推定するシミュレーション手法

図1 時間発展シミュレーションにおける相空間面積の誤差の時間変化
(a)は低自由度ハミルトン系の場合の誤差の時間変化を示し、(b)は系(a)を弱い線形バネで繋いだ系における誤差の時間変化を示します。
理論的な物質材料研究の一分野では、分子動力学法に基づいた原子・分子レベルの数値シミュレーション結果を元に研究が進められます。そのため、古典論的運動方程式を正確かつ高速に解くためのシミュレーション手法の高度化が求められています。
本研究では、系のエネルギー等(ミクロカノニカルな)統計力学的量を少数のシミュレーションデータから計算する手法を提案しています。ただし、計算時間が長時間にわたると誤差が増加するため、本論文においてどの程度の時間まで本手法が有効であるか検証計算を行いました。簡単なテスト系(低自由度ハミルトン系)で本来時間保存する統計力学的量(相空間内の面積)を計算したところ、T〜200 までは誤差を少なく抑えてシミュレーションを実行することができました(図1(a))。一方で低自由度ハミルトン系を弱い線形バネで繋いだ系では、本手法が比較的長時間(T〜2000)にわたって有効であることが確認できました(図1(b))。
本結果を踏まえ、本来短時間である有効時間を延ばすべく、今後様々な工夫について考察を続けていきます。
謝辞
本研究は、JPSJ科研費(24K06858)基盤研究(C)「正準変換補間法の力学系への応用」において実施されました。
著者情報
参考文献
Sasa, N., Small Dispersion Limit of Momentum Conservation Law, JSIAM Letters, vol.16, 2024, p.37–40.
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