公開日付: 2026年3月27日
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設計時の限界を超え大強度出力での陽子ビーム損失を極小化
-次世代マルチメガワット級加速器の安定運転に向けた挑戦-

図1 1 MWの運転でビーム損失を減らした結果

図2 本研究で達成した装置の放射化の低減と限定化
原子力機構の大強度陽子加速器施設 J-PARC にある3 GeVシンクロトロン(RCS)は、1 MW級(設計値)の世界最高クラス大強度出力の陽子ビームを多くの実験施設へ供給しています。しかし、大強度運転ではビーム損失が避けられず、装置の放射化や性能低下を招くため、安定した加速器運転の最大の課題となっていました。特に物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設、及びハドロン実験施設といった複数のユーザー施設へビームを同時に分配して送るRCSでは、異なるビーム条件を同時に満たす必要があり、困難さが増します。
本研究では数値シミュレーションと実験を組み合わせ、ビーム損失の最小化と局所化に成功しました。まず、負水素イオンを陽子へ変換する炭素フォイルへ入射する際に生じる散乱損失を、フォイルサイズの縮小と入射ビーム形状の最適化で低減しました。さらに、同電荷粒子間の反発(空間電荷効果)によるビームサイズ拡大やハロー形成を抑えるため、入射過程で時間・空間的にビームを均一化し、安定した分布を実現しました。その結果、損失を低エネルギー域に限定し、コリメータに局所化することに成功しました(図1)。その結果、残留損失はわずか0.1 kWで、設計上限の4 kWを大きく下回り、装置の放射化も抑制できました(図2)。これによりRCSは1 MW運転で稼働率98 %以上を達成し、さらに1 MW超の出力へ拡張可能となりました。
本成果は、米国物理学会誌でEditors’ Suggestionに選ばれるなど国際的にも高く評価されています。
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