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公開日付: 2026年3月31日

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斜入射中性子小角散乱を実現するためのゲイン20倍の集光ミラーを開発

図1 中性子ビームを集光した場合と集光せずに絞った場合とのビームラインの概念図

図1 中性子ビームを集光した場合と集光せずに絞った場合とのビームラインの概念図

集光ミラー表面は楕円(点線)に沿った形状をしていて、第1スリットを出て広がるビームを反射して再び検出器表面に集めます。集光しない場合は第2スリットでさらにビームを絞るので強度が大きく落ちてしまいます。

図2 中性子ビームを集光した場合と集光せずに絞った場合とで測定したビーム強度の比較

図2 中性子ビームを集光した場合と集光せずに絞った場合とで測定したビーム強度の比較

集光されたビームのピーク強度が集光しない場合よりも約20倍に増強されています。また、強度が横に広がるバックグラウンドはピークの1/500以下で、集光しない場合から悪化していません。


斜入射中性子小角散乱とは細く絞った中性子ビームを使って、物質の表面や界面の構造を知る実験方法です。構造を明瞭に決定するにはたくさんの中性子が必要ですが、ビームを細く絞らないといけないために中性子強度がひどく失われるという問題があります。

そこで本研究開発では、中性子ビームを細く絞りながらも中性子強度を増強するために、中性子を反射して集光する鏡(中性子集光スーパーミラー)を開発しました(図1)。その結果、このミラーを使って波長0.23 nm 以上の中性子ビームを普通に細く絞るよりも20倍の強度を持ち、しかもミラーによる中性子の散らばりがほとんどないビームへと集光することに成功しました(図2)。

中性子集光スーパーミラーは、中性子が効率的に反射するよう石英基板の上にNiC(ニッケル、炭素)とTi(チタン)のナノメートル厚さの層を交互に千層以上積み上げたもので、石英基板の表面は平坦ではなく、非常になめらかな楕円形状にしました。この基板形状は楕円の焦点から発射された光線(中性子線)が楕円で鏡面反射されると全てがもう一つの焦点に到達する、という幾何学的な性質に基づいています。私たちは中性子鏡面反射率が高く、鏡の粗さによる非鏡面散乱の非常に少ないスーパーミラーを開発してきており、今回の開発をさらに進めて、斜入射中性子小角散乱実験だけでなく中性子ビームをさらに有効活用する実験技術の実現を目指しています。

著者情報
参考文献
Yamazaki, D. et al., A Focusing Supermirror for Time-of-Flight Grazing-Incidence Small-Angle Neutron Scattering Measurement, Quantum Beam Science, vol.9, issue 2, 2025, 12p.
外部論文: https://doi.org/10.3390/qubs9020020
関連情報: MLF月間報告2025年6月研究成果:中性子基盤, BL17(偏極中性子反射率計「写楽」)TOF-GISANS用中性子集光スーパーミラーの開発

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