公開日付: 2025年 12月 19日
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資源のリサイクル技術を進化させる新たな視点
-「超分子集合体」による希少金属の選択性と抽出速度のコントロール-

図1 (a)小角X線散乱(SAXS)により明らかにした抽出剤の構造化が及ぼす選択性への影響、(b)中性子反射率法(NR)により明らかにした抽出速度への影響
溶媒抽出法は、持続可能な未来を支える資源のリサイクルに係る主要な分離手法の一つです。この手法は、有機溶媒に希釈した抽出剤を用いて、水相中に混在する金属を選択的に分離するリサイクル方法です。従来の抽出研究は、抽出剤と金属の親和性のみに着目していましたが、選択性や反応速度における溶媒効果を説明できませんでした。しかし近年、有機相中の抽出剤が超分子集合体を形成し、抽出性能に寄与することが明らかとなってきました。
抽出剤の構造化が抽出性能に与える影響を明確にするため、2種類の希釈剤中のマロンアミド抽出剤によるパラジウム(Pd)とネオジム(Nd)の抽出で形成される超分子集合体を、小角X線散乱(SAXS)及び中性子反射率法(NR)により調査しました。
SAXSでは、選択性に関係する集合体サイズの識別効果を明らかにしました(図1(a))。トルエンでは、小さな集合体(約1.4 nm)が形成され、その内部にはPdイオンのみが取り込まれ、高い選択性が得られました。一方、ヘプタンでは大きな集合体(約3.5 nm)が形成され、その内部には両方の金属が取り込まれ、金属の選択性が低下しました。NRでは、抽出速度に影響を与える抽出剤の界面蓄積効果を明らかにしました(図1(b))。トルエン界面では、厚く希薄な抽出剤層が形成され、抽出速度が遅くなったのに対し、ヘプタン界面では、薄く密な抽出剤層が形成され、抽出速度が速くなりました。
本研究は、フランス(CEA, CNRS)と日本(JAEA, J-PARC, KEK, CROSS)との共同研究です。今後は、集合体サイズの制御を通じた選択性や抽出速度を調整可能な抽出システムを開発していきます。
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