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公開日付: 2026年3月3日

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やっかいな分析は理論で減らす:理論的スケーリングファクタ法の開発
-Cs-135への適用-

図1 理論的スケーリングファクタ(TSF)法によるインベントリ評価フロー

図1 理論的スケーリングファクタ(TSF)法によるインベントリ評価フロー

TSF法によるインベントリ評価フローを示しています。1F炉内のインベントリ計算値を使って、異なる燃焼燃料の溶融混合等を考慮したTSF(最確/上限/下限)を導出します。数少ない実分析値を使ってTSFの妥当性を確認し、最終的にはキー核種の分析値とTSFのみで難分析核種のインベントリ評価を行います。


スケーリングファクタ法は、放射性廃棄物中の難分析核種のインベントリ(重量や放射能)を評価する方法の一つです。従来のスケーリングファクタ法では、分析が容易な核種(キー核種)と難分析核種の相関関係を事前に求めておき、キー核種の分析値と相関関係を利用して、難分析核種のインベントリを評価します。この方法は、多数の核種分析を積み上げて相関関係を得る必要があり、溶解や分析が難しい多様な燃料デブリへ適用することは容易ではありません。

本研究では、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故で発生した燃料デブリの核種インベントリ評価の合理化・効率化を目的として、理論的スケーリングファクタ(TSF)法という手法を新たに開発しました(図1)。TSF法では、核種分析の代わりに詳細なインベントリ計算値を使って、燃料デブリ特有の燃料溶融や混合を考慮した核種相関式を導出します。この相関式を“TSF”と呼んでいます。この手法の特長は、1)信頼性が高い事故直前での3次元炉心核種インベントリデータを使用する、2)燃焼度が異なる燃料の溶融混合を考慮する、3)核種相関について、可能な限り最確値、上限値、下限値を理論的に評価する、4)利用可能な分析値が得られた場合にはTSF法による結果と比較してその信頼性を確認する、といった点が挙げられます。対象とする核種により、TSFの評価手法は異なり試行錯誤が必要になります。

本研究では、バックエンド分野で重要な長寿命難分析核種Cs-135(キー核種:Cs-137)について、TSF法を適用しました(図2、詳細欄に記載)。1F事故由来の環境試料分析値とTSFによる評価結果はよく整合しており、TSF法の妥当性を確認しました。今後は燃料デブリ由来とされるアクチノイド核種に対してTSF法の検討を進めます。

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図2  Cs-135への適用結果

図2 Cs-135への適用結果

長寿命難分析核種Cs-135へTSF法を適用した結果です。3本の直線が導出したTSFで、1F事故由来の分析値はこの上下限幅に入りました。今後、蓄積される多様な燃料デブリの分析値も、この範囲に入ることが予想されます。
著者情報
参考文献
Sakamoto, M. et al., Development of a Theoretical Scaling Factor Method for the Inventory Estimation of Difficult-to-Measure Nuclide Cs-135 in Fuel Debris and Radioactive Wastes, Journal of Nuclear Science and Technology, vol.62, issue 8, 2025, p.756–765.
外部論文: https://doi.org/10.1080/00223131.2025.2478926

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