公開日付: 2026年3月18日
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1F2号機原子炉圧力容器の“見えない損傷”を解明する
-共晶溶融を踏まえた粒子法による溶融物挙動解析-

図1 福島第一原子力発電所2号機原子炉圧力容器(RPV)下部構造における局所破損と炉心物質移行挙動の解析結果
*出典:東京電力ホールディングス https://photo.tepco.co.jp/date/2018/201804-j/180426-01j.html
東京電力福島第一原子力発電所(1F)2号機では、原子炉圧力容器(RPV)に明確な大規模損傷は確認されていない一方、その下部では炉心物質が流下したとみられる痕跡や堆積物が観測されています。
この前例のない現象を理解するため、原子力機構ではRPV下部を貫通する構造を模擬した実験を行い、ジルコニウム(Zr)−ステンレス鋼(SS)の共晶反応により、貫通構造物周辺で局所的な溶融が生じ得ることを明らかにしました(図1)。しかし、こうした局所破損部から炉心物質がどのように流出・凝固するかまでを実験で再現することは困難です。
そこで本研究では、流体や構造物を多数の粒子の集まりとして表現し、個々の粒子の運動と相互作用を追跡することで、溶融・流動・凝固といった複雑な変形挙動を物理的に再現できる粒子法(Moving Particle Semi-implicit method, MPS法)を用いました。本解析では、事故当時の2号機の熱・構造条件に加え、原子力機構が取得したZr−SSの共晶反応温度を反映した実験データに基づき、Zr−SS界面に配置した粒子に低い融点を与えることで、共晶反応による融点低下を考慮した解析を行いました。その結果、RPV壁に囲まれたCRD(制御棒駆動機構)ハウジング周辺で局所的な破損が生じ、流出した溶融炉心物質がハウジング外面で再凝固する挙動を再現しました。この結果は2号機原子炉格納容器(PCV)内部調査で確認された付着物状況と整合しました。
本研究により、Zr−SS共晶反応が2号機RPV下部構造の損傷進展と溶融物流出に寄与した可能性が示され、事故時の炉内挙動理解や燃料デブリ分布推定の高度化に資する知見が得られました。
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