公開日付: 2026年4月8日
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遠隔分析のためのレーザー誘起破壊分光法(LIBS)に関する研究開発
-超長尺光ファイバー及び音響波アシスト型マイクロチップLIBSによる遠隔元素分析-

図1 様々な長さの光ファイバーを用いたGdの定性・定量分析
東京電力福島第一原子力発電所(1F)の安全な廃炉に向け、サイトの初期評価から廃棄物保管に至るあらゆる段階において、遠隔・その場での多元素分析が必要不可欠です。しかし、放射線量率が極めて高いこともあって原子炉格納容器へのアクセスが制限されており、従来の分析手法の適用には技術的な制約があります。1Fで安全に作業を実施するには100 mを超える距離が必要であると想定されているため、私たちは「光ファイバー及び音響波アシスト型マイクロチップ・レーザー誘起ブレークダウン分光法(AW-mLIBS)」を開発しました。
AW-mLIBSは原子発光分光法の一種であり、高エネルギーのパルスレーザーを試料表面に集光して物質をアブレーションし、高温プラズマを生成します。生成されたプラズマから放出される光には、試料を構成する元素固有波長の発光が含まれており、これを分光器でリアルタイムに分析します。本手法では、レーザー発振に必要な励起光及びプラズマ発光の伝送に光ファイバーを使用し、試料の近くでレーザー発振させることで、100 mを超える長距離からの遠隔分析を可能にしています。また、プラズマ発光と同時に発生するレーザー誘起プラズマ音響信号(LIP-AS)をマイクで検出することで、レーザー焦点位置の最適化に利用しています。これにより測定の再現性を向上できます。
1Fの一部の燃料棒にはGd2O3が使用されており、Gdの分析は非常に重要です。そこで本研究では、模擬デブリに含まれる濃度0.1~1.1 wt%のガドリニウム(Gd)を対象とし、異なる長さの光ファイバーを用いてAW-mLIBSシステムの定性分析(測定位置にどの元素があるか)及び定量分析(各元素がどの程度含まれるか)の性能を評価しました。図1(a)に示すとおり、0.1 wt%を超える濃度では、全てのファイバー長においてGdの放出スペクトル線が検出されました。しかし、ファイバー長300 mにおいては、信号の減衰により、0.1 wt%未満のGdは検出不能でした。これは、この濃度レベルにおけるスペクトルが、ブランク試料のスペクトルと区別がつかないためです。ウランの代替元素として一定濃度のセリウム(Ce)を混合した模擬デブリに対してGd (501 nm) / Ce (474 nm)の発光強度比を利用した単変量検量線法によってGdの検出限界(LOD)を0.1~0.2 wt%であると評価し、目的としたGd濃度の測定を100 m程度の距離から実施可能であることを確認しました(図1(b))。
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