公開日付: 2026年4月15日
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ICP-MS/MSを用いた塩酸フリーな難測定核種迅速分析手法の開発
-コンクリートがれき中の79Seの測定-

図1 NH3ガスを用いたICP-MS/MSによる79Se分析の反応メカニズム概略図
*1 その他:コンクリート試料のマトリックスを構成する元素・核種(例:Na、Al、137Cs、90Sr 等)
東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故に伴う多量の放射性廃棄物の処分のためには、核種インベントリの迅速かつ信頼性の高い評価が必要です。しかし、環境影響上重要な79Seは、従来の放射線計測では長寿命核種ゆえの長時間の測定に加え、測定時に干渉する共存核種を取り除くための煩雑な化学分離が必要となることから、迅速な評価が課題でした。
大熊分析・研究センターでは、長寿命核種分析の簡易・迅速化及び腐食に伴う分析設備への負荷低減を目的として、塩酸を用いない簡易な固相抽出分離と誘導結合プラズマタンデム質量分析法(ICP-MS/MS)を組み合わせた難測定核種*2の実用的な分析法*3を核種ごとに整備してきました。本研究では同様なコンセプトで79Seに適用し、実用的な分析手法の開発を行いました。
79Seは陰イオン交換樹脂と活性アルミナを用いた段階的な化学分離によりコンクリートマトリクスから分離・精製された後、アンモニアガス(NH3)をリアクションガスに用いたICP-MS/MSによる測定により、同重体である79Brやアルゴンの多原子イオンの妨害を効果的に低減できました(図1)。その結果、化学分離とICP-MS/MS測定との組み合わせにより79Brの妨害信号を約1,000万分の1まで低減できました。
本分析法の方法検出下限値(MLOD)*4は0.1 Bq g−1であり、トレンチ処分の濃度上限値*5 23 Bq g−1を十分に下回る感度で評価可能であることに加え、数日程度で分析可能であり、従来の放射線計測法と比較し分析時間の大幅な短縮が期待できます。以上の結果より、本分析法の1F廃棄物分析としての有効性を確認することができました。
*2 例:93Zr、93Mo、126Sn
*3 廃棄物イベントリ評価のための定常分析法
*4 1g程度の供試料量(コンクリート試料)の場合
*5 原子力安全委員会, 低レベル放射性固体廃棄物の埋設処分に係る放射能濃度上限値について, 2007, 参考資料3, 表13, p.3–21
原子力規制委員会アーカイブ検索システム:https://www.da.nra.go.jp/detail/NRA093215158
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