公開日付: 2026年 1月 8日
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セシウムはどのように土に吸着するのか?
-高精度なシミュレーションと実験が解き明かすナノスケールの世界-

図1 粘土鉱物の役割とナノスケールの構造
原子力発電所の事故により放出された放射性セシウム(Cs)は、土壌表層に含まれる粘土鉱物に強く吸着したため、土壌表層に留まったと考えられています。しかし、粘土鉱物へのCsの吸着反応は複雑なため未解明な点が多く残されています。その一つが、Csの濃度によって吸着構造が変化する濃度依存性です。
本研究では、X線吸収微細構造(XAFS)実験とスーパーコンピュータによる第一原理計算を駆使することで、Csを吸着した粘土鉱物の構造を1ナノメートル(1メートルの10億分の1)のスケールで捉えることに成功しました。これにより、Cs濃度の上昇に従って粘土鉱物の層構造がジッパーを閉めるように収縮していくことが分かりました。さらに、Csはその吸着状態において、イオン結合という比較的弱い相互作用で吸着しているにもかかわらず、粘土鉱物の層間に挟まれたナノスケールの構造の影響で、強く吸着することを明らかにしました。
今回の発見により、Csの地球環境での動態をより正確に予測する手がかりとなります。さらに、Csや粘土鉱物が関わる放射性廃棄物の処理をより安全に進めるために役立つと期待されます。
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粘土鉱物の層間に吸着したイオンは、溶液中のイオンと交換することができます。そのため、粘土鉱物がCsイオンを含む溶液に触れると、Csイオンが、粘土鉱物の層間に吸着したNaイオンなどと交換し、層間に吸着します。また、バーミキュライト等の粘土鉱物は、層が膨潤したり収縮したりする特性を持ちます。層が膨潤している場合は層間の吸着イオンが水和している一方で、収縮している場合は脱水和しています。Csイオンは脱水しやすくイオン半径が大きいという特徴を持つため、層間に吸着する際には脱水和し、粘土鉱物の層構造にある隙間にぴったりはまります。この吸着構造が安定であるため、Csは粘土鉱物に強く吸着すると考えられます。
Yamaguchi, A. et al., Molecular Geochemistry of Radium: A Key to Understanding Cation Adsorption Reaction on Clay Minerals, Journal of Colloid and Interface Science, vol.661, 2024, p.317–332.
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