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公開日付: 2026年10月28日

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核燃料物質の高温比熱異常を原子レベルで解明
-機械学習シミュレーションが明かす「溶ける前の変化」-

図1 機械学習分子動力学法による蛍石型構造材料の高温シミュレーション

図1 機械学習分子動力学法による蛍石型構造材料の高温シミュレーション

 

多数の構造に対して量子力学計算を実行し、機械学習により原子間力を予測するニューラルネットワークを作成します。このニューラルネットワークにより、高速・高精度な機械学習分子動力学計算(MLMD)が可能となります(a)。(b)の図は、MLMDによって計算された二酸化トリウム(ThO₂)の比熱の温度変化を示しています。温度上昇とともに原子の局所的な秩序構造が乱れ、転移温度を超えると液体的な構造が支配的となる様子が確認できます(d)。

核燃料材料の二酸化トリウム(ThO₂)と核融合炉のトリチウム増殖材料候補である酸化リチウム(Li₂O)は、「蛍石型構造」と呼ばれる結晶構造を持ちます。これらの材料は高温になると比熱が急激に増大する「λ(ラムダ)転移」と呼ばれる現象を示しますが(図1(b))、そのメカニズムは原子レベルでは十分に理解されていませんでした。

私たちは、量子力学計算の結果を機械学習モデルに学習させ、高速かつ高精度な原子シミュレーションを可能にする「機械学習分子動力学法(MLMD)」を用いて、これらの材料の高温特性を解析しました。MLMDは格子定数や熱膨張係数、融点といった実験値を高い精度で再現し、Li₂Oについては実験で未観測のλ転移温度(1560 K)も予測しました。

これらの材料では、高温になるにつれて一部の原子(ThO₂ではO原子、Li₂OではLi原子)が結晶中を活発に移動するようになります。そこで、これらの原子の局所的な八面体配置(中心原子を6個の原子が正八面体状に囲む構造)の乱れ具合を定量化する「秩序変数」を新たに定義し(図1(c)) 、転移温度付近で3種類の局所構造—対称性が保たれた正規の秩序構造・格子欠陥的構造・液体的構造—が共存することを明らかにしました(図1(d))。転移温度を超えると液体的構造が支配的となり、原子の規則的な配列が失われていきます。

この「局所的な対称性の破れ」がλ転移をもたらすという新たな描像は、高温核材料が「溶ける前」に生じる原子レベルの構造変化を明らかにするものであり、その設計・安全評価に貢献することが期待されます。

謝辞
本研究は、JSPS科研費(基盤研究(C)JP24K08574、基盤研究(B)JP25K01658、基盤研究(C)JP23K04637)の助成を受けて行われました。
著者情報
参考文献
Kobayashi, K. et al., Specific Heat Anomalies and Local Symmetry Breaking in (Anti-)Fluorite Materials: A Machine Learning Molecular Dynamics Study, The Journal of Chemical Physics, vol.162, issue 24, 2025, 244508, 11p.
外部論文: https://doi.org/10.1063/5.0262059

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