6-1 世界初HTTRを用いた熱利用試験計画

−原子力エネルギーの多様な産業利用に向けて−

図6-2 HTTRに接続する熱利用システムの系統候補

図6-2 HTTRに接続する熱利用システムの系統候補

中間熱交換器を介して原子炉の熱により加熱された2次ヘリウムガスは、カスケード的に配置された水素製造施設とヘリウムガスタービン発電設備に輸送され、水素製造や発電の熱源として用いられます。

 

図6-3 HTTRに接続する熱利用システムの配置候補

図6-3 HTTRに接続する熱利用システムの配置候補

原子炉建屋と水素製造施設は、水素製造施設からの可燃性ガスの火災・爆発による安全上重要な機器を格納する原子炉建屋等の損傷や、有毒ガスによる原子炉運転員の被毒防止に必要な離隔距離を確保して配置します。

水素製造や高効率発電等の高温ガス炉の多様な産業利用には、高温ガス炉技術の実用化に向けた技術課題である原子炉施設と水素製造施設の接続時の安全基準とその設計対策の確立及びヘリウムガスタービン発電設備の総合性能検証の解決が必要です。本研究では、これらの技術課題の解決に向けた技術実証項目を提案するとともに、熱利用システムのプラント概念を提示しました。

原子炉施設と水素製造施設の接続時の安全基準とその設計対策の確立に向けては、水素製造に必要な高温を安定して供給可能な高温工学試験研究炉(HTTR)と水素製造施設の接続に係る設置変更許可申請を通した安全基準の策定や水素製造施設の異常模擬試験による設計対策の確立を技術実証項目として選定しました。また、ヘリウムガスタービン発電設備の総合性能検証に向けては、HTTRに接続したヘリウムガスタービン発電設備の起動停止や定格連続運転を実施し、実用炉の使用条件下で想定される軸系の振動や温度過渡変化に対するタービンの性能や運転の安定性を確証することを技術実証項目として選定しました。

これらの技術実証を実施可能なプラント概念の候補として、HTTR既設設備の改造や移設を最小限にすることに加え、実用高温ガス炉システムを可能な限り模擬可能な系統概念を検討しました。熱利用システムは2次ヘリウム冷却設備に設置し、タービンや圧縮機,発電機,再生熱交換器,前置冷却器から構成されるヘリウムガスタービン発電設備と水素製造施設に熱供給する第2中間熱交換器をカスケード的に配置しました(図6-2)。また、水素製造施設からの可燃性ガスの火災・爆発に対する安全上重要な機器を格納する原子炉建屋等の損傷や有毒ガス漏えいに対する原子炉の運転員の被毒の防止に必要な離隔距離を、原子炉建屋と水素製造施設の間に確保した熱利用システムの配置概念を示しました(図6-3)。

今後は、提示したプラント概念の系統設計,機器設計及び配置設計を実施し、技術的成立性を確認するとともに、HTTRを用いた熱利用試験計画の実現に向けて、安全評価等を進めていきます。