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固体表面の微量成分の分布を可視化
−レーザーと同位体計測を用いた高感度イメージング法−


図1 定量イメージング装置の構成と同位体希釈質量分析法の原理

図1 定量イメージング装置の構成と同位体希釈質量分析法の原理

図2 本法とEPMAによる人の歯表面の成分イメージングの比較

図2 本法とEPMAによる人の歯表面の成分イメージングの比較


 生体・環境試料中の微量成分や微量同位体の測定には、天然とは異なる同位体比を持つ標準物質を試料へと添加して測定する同位体希釈質量分析法(IDMS)がよく用いられます。この方法は、高感度かつ高精度な分析技術として利用されていますが、従来のIDMSでは固体試料を粉砕や溶液化を経て標準と混合する必要があるため、分布情報を得ることはできませんでした。そこで、高感度でイメージングが可能なレーザーアブレーション-誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)に独自設計のチャンバーを用いることで、レーザーでエアロゾル化した試料と噴霧した標準物質を気中で混合して分析する微量成分の定量イメージング法を開発しました(図1)。
 この方法では、レーザー照射で掘削された固体試料量と掘削された試料の同位体比が分かれば、濃度と供試量既知の同位体比が異なる標準物質を随時混合して測定することで、試料からの各同位体供給分を推定でき、固体試料表面の元素濃度分布を求めることができます。必要となる固体試料中の同位体比は、試料を標準物質とは混合せずに測定することで決定し、レーザー照射での掘削量はデジタルマイクロスコープで求めました。その結果、人の歯などの固体試料における微量成分の定量とイメージングの両立を実現しました(図2)。
 本法は、様々な生体・環境試料における元素やRIなどの微量成分の分析へ展開が期待されます。

謝辞

本研究は、JAEA英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(JPJA19H19210081)「化学計測技術とインフォマティックスを融合したデブリ性状把握手法の開発とタイアップ型人材育成」の助成を受けたものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 松枝 誠
福島廃炉安全工学研究所 廃炉環境国際共同研究センター
環境影響評価グループ

参考文献

Yanagisawa, K., Matsueda, M. et al., Quantitative Imaging of Trace Elements in Solid Samples by Online Isotope Dilution Laser Ablation-Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry, Analyst, vol.148, issue 18, 2023, p.4291–4299.

外部論文: https://doi.org/10.1039/D3AN01028G

公開日 2025年 3月 31日

 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発(環境回復に係る研究開発) 

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