2.1 核融合炉のビーム電流駆動が射程内に
   ―JT-60負イオン源中性粒子入射実験で実証―


図2-1 ビーム駆動電流分布

実験値と計算値が良く合っており、理論予測の正しさを示しています。理論予測は、多段イオン化効果を考慮した軌道追跡モンテカルロコードにより計算しました。

 


図2-2 電流駆動効率の電子温度に対する依存性

ITERに迫る高い電子温度領域で高いビーム電流駆動効率が得られることを実証しました。電流駆動効率(最高値1.3×1019)は電子温度に比例し、ITERの運転領域(>10 keV)では電流駆動効率の設計値(〜2×1019以上)が得られる見通しです。

 


 電磁誘導(トランス方式)によらずにトカマクのプラズマ電流を駆動する有力な方法の一つとして、高エネルギーの中性粒子ビームをプラズマに入射して(NBI)、ビームのエネルギーをプラズマの電子やイオンに与えて電流を駆動する方法があります。ビーム入射法はプラズマの強力な加熱手段でもあります。
 JT-60ではトカマクの連続運転法の研究開発プログラムの一つとして、高温・高密度の核融合炉プラズマで電流駆動が可能な負イオン源N-NBI装置(500 kV、10  MW)を世界に先駆けて開発し、加熱及び電流駆動の研究を進めています。図2-1はビームによって駆動された電流の分布を示します。電流は予想どおり中心にピークをもった分布で流れ、実験誤差の範囲で理論計算値とよく一致しています。電流駆動効率(単位電力当り、単位面積当りの駆動電流値)を中心の電子温度に対して示したものが図2-2です。効率は電子温度とともに、また正イオン源P-NBIとの比較からビームエネルギーとともに上昇することがわかります。これらはいずれも理論的予測に沿っており、将来の核融合炉、国際熱核融合実験炉(ITER)などの条件下(エネルギー1 MeV、電子温度10 keV以上)で必要とされる電流駆動の性能が達成できる見通しが高いことを示しています。


参考文献

T. Oikawa et al., Heating and Non-Inductive Current Drive by Negative-Ion Based NBI in JT-60U, Nucl. Fusion, 40, 435 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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