2.5 強磁性体で磁場を均して閉じ込め改善


図2-8 フェライト鋼による磁場リップル低減の原理

 


図2-9 フェライト鋼の装着と磁場リップル

 


図2-10 高速イオンの損失量の比較

フェライト鋼板の装着によって壁の温度上昇の最高値が60℃から25℃に低下しました。これは高速イオンの損失量にして約50%の減少に相当します。高温の領域が外側にずれるのは、リップルの減少によって、リップル損失の生ずる場所が外側にずれたことに対応しています。

 


 トカマク装置では、環状に配置されたトロイダル磁場コイル間の磁場の弱い領域から高速イオンが逃げ出すリップル(磁場の場所による強弱の変化)損失が避けられず、定常運転を実現する上で一つの課題となっています。
 中型トカマクJFT-2Mでは、強磁性体であるフェライト鋼を巧く使ってトロイダル磁場の弱い部分を補い、磁場のリップルを小さくして(図2-8)、高速イオンの損失を減らせることを初めて実証しました。フェライト鋼は図2-9に示すように、真空容器と16個のトロイダル磁場コイルの間に装着し、フェライト鋼の漏洩磁場によってコイル間の磁場の弱い部分を補強します。これによって磁場のリップルは約1/2に減少しました。約36 keVの高速水素イオンを中性粒子入射装置で入射して、高速イオンの損失量に比例する真空容器内壁の温度上昇を赤外線カメラで観測してリップル損失量を評価しました。結果は図2-10に示すとおりで、リップル損失が約50%減少したことが確認できました。これまでの実験では、プラズマの生成・制御に対するフェライト鋼の悪い影響は観測されていません。フェライト鋼は低放射化材として将来の核融合炉材料の有力候補の一つであり、JFT-2Mではフェライト鋼とプラズマの整合性を調べる研究を今後も進めていく計画です。


参考文献

M. Sato et al., Design and First Experimental Results of Toroidal Field Ripple Reduction Using Ferritic Insertion in JFT-2M, Fusion Eng. Des., 51-52, 1071 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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