2.6 小型トーラスプラズマを入射して核融合炉の燃料を補給する
   ―三次元シミュレーションでイメージ―


拡大図(126KB)

図2-11 コンパクトトーラス(CT)入射過程の三次元磁気流体シミュレーション

ターゲットプラズマ中では、CTのもっている磁力線がほどけて新たにターゲットを磁場と結び出されるような磁場の変形が生じ(磁気リコネクション)、CTが塊として形を保持できなくなりターゲットプラズマ中に混入して燃料補給が行われます。 CTの進入過程では、ターゲットの磁力線がCTにより曲げ伸ばされる結果生ずる磁気張力もCTの減速に働きます。

 


 核融合炉心プラズマに燃料を補給する一つの方法として、コンパクトトーラス(CT)入射法が注目されています。CTは磁化コイルを備えた同軸ガンで生成され、超小型のトカマクともいえる環状の形をしたそれ自体磁場をもったプラズマの塊です。これを高速で炉心プラズマの中心部へ入射して局所的な燃料補給をしたり、加速制御によって任意の場所に入射して燃焼制御を行うことなどが考えられており、JFT-2Mなどの中型トカマク装置で実験が行われています。しかしCTのプラズマ中での振る舞いや燃料補給の有効性などはまだ十分に理解されているとは言えません。
 私たちは三次元磁気流体シミュレーションにより、核融合装置をモデル化したターゲット磁化プラズマ中にCTを入射し、進入過程、減速機構などのダイナミクスを詳しく調べています(図2-11)。これまでに、(1)入射したCTはターゲット領域の磁場(閉じ込め磁場に対応)と磁気リコネクションという複雑な相互作用をして、独立なプラズマ塊としての形を失い、その結果CTの高密度プラズマが燃料としてターゲットプラズマに供給されること、(2)CTの減速にはターゲット磁場の圧力だけでなく、磁気張力も作用すること、(3)磁気リコネクションがこの磁気張力による減速作用を緩和する効果をもつこと、などを明らかにしました。実験結果との比較・検討など今後もこの研究を進めることが必要です。


参考文献

鈴木喜雄他, 磁化プラズマ中へ入射したコンパクトトーラスの三次元ダイナミクス, プラズマ・核融合学会誌, 76(3), 288 (2000). 博士研究員

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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