2.9  ITERの中性粒子入射孔、中性子遮蔽計算で基準クリア


図2-15 NBIポートを有するITERの1/4象元平面図

この図では3本のNBI入射孔は厚さ10〜50 cmの金属遮蔽板で囲われています。

 


図2-16 生体遮蔽体の誘導放射化物密度の時間変化

生体遮蔽体での運転停止後約11日(106秒)での放射線量率は20〜70マイクロシーベルト/時間であり、自主安全基準である100マイクロシーベルト/時間を下回ります。

 


 ITERは熱核融合反応で生ずる中性子エネルギーを熱出力として利用します。しかし、中性子は周辺機器構造物に当たり、それらの一部を放射化します。放射線の生物影響値は生体遮蔽境界で安全基準値以下となることが必要です。中性粒子入射加熱(NBI)では高エネルギー粒子をプラズマ中に供給する必要があるため、原理的に大きな入射孔を要します。この入射孔からの中性子の漏れ出しを許容値以下とする構造設計が必要です。図2-15にITERの平面図の一例を示します。遮蔽計算には通常三次元MCNP(Monte-Carlo Nuclear Particle Transport)コードを使用します。このコードは大型複雑構造物では計算時間が膨大となり現実的ではありません。そこでMCNPコードを中性子の挙動計算のみに用い、派生する放射化物の発生量やガンマ線量は二次元の有限要素法で求めるように組合せに工夫をこらし、生体遮蔽境界での放射線量を求めました(図2-16)。その結果、自主安全基準より低い放射線量値になる入射孔の設計を行うことができました。


参考文献

S. Sato et al., Evaluation of Biological Dose Rates Around the ITER NBI Ports by 2-D SN/Activation and 3-D Monte Carlo Analyses, Fusion Eng. Des., 47, 425 (2000).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
Copyright(c)日本原子力研究所