2.10 数万度のプラズマの熱が来たって大丈夫
   ―交換なしで3年以上の運転に耐えるダイバータ―


拡大図(95KB)

図2-17(a) 図2-17(b)
ITERの断面図 開発したITER用実規模のダイバータターゲット試験体

 


図2-18 米国サンディア国立研究所で実施した運転状態模擬試験体

 


 国際熱核融合実験炉(ITER)を建設するに当って、数万度のプラズマに直接接触する、熱に耐えるダイバータの開発は、最も困難な技術の一つであります。すなわち、このダイバータにはプラズマの粒子や熱が入り込み、その熱流束は、軽水炉の10倍以上になります。また、熱負荷だけでなく、大きな力が時間的に断続的にかかるため、それに耐える新たな技術開発が必要でした。
 ダイバータの開発では、原研、米国、EU、ロシアが得意分野をそれぞれ分担し、国際協力で進めました。原研が担当した、図2-17のプラズマからの熱を直接受けるターゲットの開発では、下記の新要素技術を開発しました。
 流入プラズマによる壁材のたたき出し量(専門的にはスパッタリングという。)を少なくするための、化学蒸着(CVD)で製作したタングステン板の開発、従来の炭素繊維複合材の4倍以上、銅の1.2倍の熱伝導率を持つ三次元織りの炭素繊維複合材の開発、冷却管の中にねじりテープを入れることにより、従来の2倍の除熱能力を持つ高性能冷却管の開発、銀の放射化を避けるために、銅とタングステンや炭素繊維複合材とを接合ロー付けする、銀無しロー材の開発などです。
 1.3メートルの実規模試験体を用いた熱負荷試験では、ITERの設計値である、5 MW/m2、30秒で3,000回の繰り返しと、同じ試験体で引き続いて行った20 MW/m2、10秒で1,000回の繰り返しに耐えることを確認しました。この熱負荷は、ITERでは3年以上の運転期間に相当します。
 さらに、米国で開発した、図2-18に示す支持構造物に組み込んで、ITERの運転状態を模擬する試験を行い、設計通りの性能を確認しました。 この開発により、ダイバータの技術的な見通しを得ることができました。これらの技術は、核融合以外の分野の耐熱技術への応用も期待されています。


参考文献

M. Ulrickson et al., The ITER Divertor Cassette Project, Proc. of Fusion Energy 1998, IAEA, Vienna, IAEA-CSP-1/P, 1053 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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