2.13 核融合炉燃料用リチウムセラミックスの大量生産法に見通し


図2-23 湿式造粒法によるLi2TiO3ペッブルの製造過程のフローチャート

チタン酸リチウム(Li2TiO3)、アリギン酸ナトリウム及び4H-フルフリルアルコールの水溶液を加熱、乾燥、焼成を経て焼結させて、Li2TiO3の微小球を製造するまでの過程の概要を示しています。

 


図2-24 適切なゲル球製造条件の検討結果

領域BすなわちPVA3-5wt%の部分では真球に近いものが得られることがわかりました。その条件の一例を示します。

 


図2-25 結晶粒径の制御性試験結果

Li2TiO3の粒径は小さいほど核融合炉燃料の生産としては有利と考えられます。目標燒結密度85%の場合、始発粉末の粒子径を10 μmから0.6 μmにしたとき小さくした方がよいことをこの図は示しています。ペッブルの結晶粒径は100 μmから20 μmとなり、0.6 μmで5 %酸化チタンを添加すると10 μm以下になることを示しています。

 


 核融合炉用燃料であるトリチウムは、核融合反応により発生する中性子がリチウムと反応することによって生産されます。このリチウムは、Li2TiO3などのリチウムを含むセラミックス微小球の形で用いられる予定です。このセラミックス微小球は、核融合炉ブランケット内に100トン程度装荷されます。国際熱核融合実験炉(ITER)の場合でも増殖ブランケットの試験として約1トン必要になります。このトリチウム増殖材であるリチウムセラミックス微小球の製造は、世界でも実験室規模(キログラムオーダー)でしか行われておらず、大量生産の目途がたっていないのが現状でした。そこで、高温ガス炉用微小被覆燃料粒子の製造経験をもつ会社と共同で「湿式造粒法」(図2-23)を考案しました(特許取得済)。微小球の核となるゲル球を大量に製造するための自動滴下装置を用いた研究を行い、適切な粒子形状を得る方法を見出しました(図2-24)。この製造技術は、従来の製造方法に比べて歩留まりもよく、望ましいより微小な粒径の微小球の製造(図2-25)が可能になったばかりでなく、製造装置の大型化も容易にできる見通しが得られました。
 ITERの建設目的の一つである「テストモジュール照射試験」に必要とされる約1トンのトリチウム増殖用セラミックス微小球を供給できる見通しを得たほか、核融合炉で用いた使用済み微小球を酸で溶かし、その溶液を微小球製造出発原料にすることによって希少資源であるリチウムのリサイクルも可能となりました。


参考文献

K. Tsuchiya et al., Development of Wet Process with Substitution Reaction for the Mass Production of Li2TiO3 Pebbles, J. Nucl. Mater., ICFRM-9, 283-287, 1380 (2000).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
Copyright(c)日本原子力研究所