3.2 大出力の核破砕水銀ターゲットは新案クロスフロー型にしてOK


図3-4 クロスフロー型水銀ターゲットの内部構造

ターゲット容器内を流れる水銀は陽子ビームとの核破砕反応により大きな発熱を生じます。案内羽根を適切に配置して、水銀が陽子ビームの照射領域を横切るように流すことにより、流れの停滞と水銀温度の過度な上昇を防ぎます。

 


図3-5 水流動可視化実験に用いたターゲットの実規模アクリルモデル

 


図3-6 水流動可視化実験の結果 −ターゲット内の流速分布−

レーザー流速分布測定システム(PIV)で流れ場を可視化すると、ハッチングで示された陽子ビーム照射領域を横切る流れ(クロスフロー)が実現されていることが確認できました。

 


 水銀ターゲットは、水銀にメガワット規模の高エネルギー陽子ビームを照射して核破砕反応を生じさせ、大強度の中性子線を発生させるための装置です。核破砕反応には大量の発熱が伴うので、この熱を効率よく除去することが重要です。そのためには陽子ビームの照射領域に水銀の流れが停滞しないようにする必要があります。また、核破砕反応による発熱密度は陽子ビームが入射するターゲット先端のビーム窓部分が最も大きく、ターゲット後方へ行くに従い指数関数的に減少するので、ターゲット先端領域で多量の水銀が流れるような流量配分を実現する必要があります。
 このような技術課題に対処するため、陽子ビームの入射方向に対して水銀の流れが直交するクロスフロー型ターゲットを考案し(図3-4)、熱流動解析コードを用いて水銀流路構造の設計検討を行いました。設計の妥当性を検証するため、図3-5に示すアクリル製の実規模水銀ターゲットモデルを製作して水流動可視化実験を行い、ターゲット内の流速分布を測定しました。その結果、水銀流路中の適切な場所に案内羽根を配置することにより、クロスフロー構造を用いてターゲット内の発熱密度分布に応じた流量配分が実現できることを実証しました(図3-6)。


参考文献

羽賀勝洋他, 案内羽根を用いたクロスフロー方式水銀ターゲットモデルの水流動実実験及び解析, 日本原子力学会誌, 42(8), 821 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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