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コヒーレント光源であるレーザーの機能を最大限に利用するには光波面を正確に制御できることが不可欠です。ことに私たちが取り組んでいる超高強度の極短パルスレーザーの発振に使用する平均出力200-300 WのNd:YAGレーザーなどでは、光学素子の熱変形、レーザー媒質の熱レンズ効果や屈折率のゆらぎによるレーザー波面の歪が重大な問題になってきます。歪のためにレーザーの集光が困難になるのです。この歪を補償する技術として、波面の歪を検出して実時間で光学素子に変形を与える位相共役技術が使われます。位相共役な光とは、入射光に対して波面が同じで逆方向に進行する光波です。入射光が非線型媒質内で形成する一種の回折格子によって逆方向に反射されるときに位相共役光となります。光の伝播路に歪があっても位相共役光として歪を逆方向から戻ってきたとき、歪が自動的に補正されます(図4-1)。私たちは、従来行われている光路内部に位相共役回路を組み込む方法ではなく、図4-2のようにこの回路を光路外部に置くことにより、20 mJのナノ秒パルスに対して従来法より10倍も早い応答速度、2倍の反射率をもち安定に動作する位相共役光学系を開発しました。図4-3に入射光と収差を補正した位相共役反射光のビーム形状を示します。図4-3(b)に見られるように、位相共役鏡によって収差による位相歪みがほぼ完全に打ち消されていることがわかります。これにより、質のよい高出力レーザーの開発が一歩前進しました。 |
参考文献
K. Tei※ et al., Ring Self-Pumped Phase Conjugator for High Energy Pulses at 1064 nm with Rhodium-Doped BaTiO3, Jpn. J. Appl. Phys., Part 1, 38(10), 5885 (1999). ※博士研究員 |
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