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宇宙空間を飛翔する人工衛星は、衛星放送・通信、気象予測、資源探査等に使われており、私たちの生活に欠くことのできない存在となっています。このような人工衛星には、大きさや重さに厳しい制限がある上、高い信頼性が要求されています。このため、衛星の姿勢制御、各種の情報認識と処理、地上との交信には、半導体素子から構成される多数の電子部品が搭載され、使用されています。しかし、このような人工衛星の中枢を担う半導体素子は、遮蔽材などで防ぐことが実質的に困難な高エネルギーの宇宙線である放射線が当ることで、素子内に発生した電荷が雑音電流となり、その大きさが回路の溶断やデジタル情報の反転などの故障や誤動作を起こし、大きな問題となっています。
私たちはこの問題の解決を目指し、高崎研究所のイオン照射施設TIARAを利用して、宇宙線による故障や誤動作を低減する技術の開発を進めてきました。マイクロビームを用いて微細なpn接合ダイオードにイオン照射を行った結果、半導体素子の基板内部に絶縁層が埋込まれた構造では(図5-1)、イオンが入射した時に発生する電流が少ないことを見い出しました(図5-2)。この結果は、イオンにより発生する電流が埋め込まれた絶縁膜で遮断されることに起因すると考えられます。詳しい解析の結果、半導体素子を絶縁膜埋込み型の構造とすることで従来の2倍以上も放射線障害が低減できることがわかり、トップシリコン層の一部をこの絶縁膜に置き換え、信号伝達の高速化が図られる等、信頼性向上への見通しが得られました。このためにこのような構造を備え、性能が向上した半導体素子は、人工衛星への需要が大いに高まると期待されます。 |
参考文献
T. Hirao et al., Studies of Charge Collection Mechanisms in SOI Devices Using a Heavy-Ion Microbeam, Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., B, 158, 260 (1999). |
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