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放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスの放射線耐性は、ヒトの細胞の約1,000倍であり、この著しく高い放射線耐性は、ラジオデュランス(図5-14)の効率良くしかも正確なDNA修復能力に依っていると言われています。これまでの研究から、ほとんど全ての生物が持っているrecAという遺伝子がラジオデュランスにもあり、この遺伝子から作られるタンパク質RecAが特殊な性質を持っていることのみが原因で、放射線耐性になっているという考えが定説でした。私たちはこの定説を確認する実験を行いました。
ラジオデュランスの中にも放射線に弱くなった放射線感受性変異株が存在します。そのDNA塩基配列を解析して、放射線感受性変異株における変異部位を同定しました(図5-15)。その変異部位がrecA遺伝子中に存在していたことから、ラジオデュランスの放射線耐性には、recA遺伝子が不可欠であるということがわかりました。しかし、私たちがRecAの修復タンパク質としての性質を評価したところ、ラジオデュランスのRecAは、放射線に弱い他の生物のRecAと何ら変わらないという意外な新事実が明らかになりました(図5-16)。この事実は、ラジオデュランスのRecAが放射線耐性に関わる特殊な性質を持っているという定説を覆すと同時にラジオデュランスの放射線耐性の原因がRecAの機能だけでは十分説明できず、RecAと一緒に働く重要なタンパク質が他に存在することを示唆しています。 |
参考文献
I. Narumi et al., Molecular Analysis of the Deinococcus radiodurans recA Locus and Identification of a Mutation Site in a DNA Repair-Deficient Mutant, rec30, Mutat. Res., 435(3), 233 (1999). |
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