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イオンビーム照射の研究対象はこれまでの半導体や無機物から最近では生物や有機物へと発展しています。これらの研究では吸収線量が照射効果を評価する上で共通の尺度となるので、イオンビーム線量を正確に測定する技術を確立する必要があります。
しかし、通常の加速器ビームでは照射場が狭いだけでなく、場内での強度が不均一かつ不安定であるため、正確な測定が困難です。これを最小限にするためビーム走査による大面積の均一な照射場を作るとともに、線量の基準となる物理的測定手段としては、最適とみなされる電離箱が高線量率では適用困難のため、電荷・熱量同時測定法を採用しました。一方、被照射物質の深度方向のエネルギー分与がこれらの物理計測のみでは評価できないため、放射線化学反応を利用したフィルム線量計の積層を同時照射することによって、粒子フルエンスとともに吸収線量の正確な決定を可能にするシステム(図5-20)を実現しました。 以上の結果、イオン種とエネルギーの広い範囲にわたって、±2%の高い正確度を持つ粒子フルエンス測定を可能にするとともに、フィルム線量計固有の不確かさと合わせて全体の不確かさが±5%以内の吸収線量計測技術を開発しました。また、広い線エネルギー付与(LET)の範囲にわたって多種類の線量計応答のLET依存性(図5-21)を明らかにしました。これらを通してγ線や電子線の照射効果とも精度よく対比できるイオンビーム利用の基盤づくりに貢献しています。 |
参考文献
T. Kojima et al., Fluence Measurements Applied to 5-20 MeV/amu Ion Beam Dosimetry by Simultaneous Use of a Total-Absorption Calorimeter and a Faraday Cup, Radiat. Phys. Chem., 53, 115 (1998). |
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