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分子動力学(MD)シミュレーションは、物質の構成原子間にどのような力が働くかだけをモデル化して粒子運動を計算し物質の性質を理解する方法です。
私たちは色々な材料の解析にこのMDシミュレーションを簡便に使えるようにするために「並列MDステンシル」を開発していますが、今回、この中の平衡系ルーチンを使って二酸化ケイ素の一種であるクリストバライトのMDシミュレーションを行いました。代表的な二酸化ケイ素である石英はその優れた熱的性質によって色々な応用がなされていますが高温ではこの石英から生成されるクリストバライトの相転移が関係した性能劣化が起こります。今まで、高温相については実験的にも理論的にもほとんど研究がなされていませんでしたが、私たちは絶対温度300度から1,800度という広い温度範囲にわたって、時間のかかるMDシミュレーションを行い、その物性値を求め相転移の様子を確認する(図7-3)とともに不思議な性質の原因を明らかにすることに成功しました。この物質の不思議さは、ポアソン比(物質を引っ張って伸ばしたとき、直角方向に縮む比率)が負であることです(図7-4)。ゴム紐を引っ張れば太さが細くなりますからゴムのポアソン比は正ですが、ポアソン比が負の物質というのは余り日常的ではありません。この研究で、広い温度範囲で見られるこの物質のポアソン比が実は全く異なるメカニズムで出てくると言うことも明らかになりました(図7-5)。 |
参考文献
H. Kimizuka et al., Mechanism for Negative Poisson Ratios over the α-β Transition of Cristobalite, SiO2: A Molecular-Dynamics Study, Phys. Rev. Lett., 84(24), 5548 (2000). |
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