8.1 ウラン資源が有効に利用できる新型軽水炉


図8-1 高転換比BWR型炉の炉心概念

燃料棒を稠密に配列し炉心内の気泡存在率(ボイド率)を高くすることにより1以上の転換比を実現するとともに、炉心を極端に扁平化することにより負のボイド反応度係数も同時に達成できました。

 


図8-2 プルト二ウム多重リサイクルPWR型炉の炉心概念

MOX燃料棒の周りを劣化ウランの燃料棒が取り囲んだシード・ブランケット集合体を採用することにより、核燃料としてプルトニウムを何度もリサイクルできる(多重リサイクル)炉心が実現できました。

 


図8-3 長期間運転BWR型炉の炉心概念

原子炉の出力が急上昇した時、中性子を炉心から逃がして出力を下げるように工夫した構造物(ボイド管集合体)を炉心内に配置すれば、燃料を2年程度燃焼させる炉心が実現できました。

 


 私たちは、減速材である水の割合を減らして高エネルギー領域の中性子を利用することにより、ウラン資源の有効利用、高燃焼度・長期間運転、プルトニウムの多重リサイクル利用などが可能となる低減速スペクトル炉の設計研究を進めています。
 設計に際しては、核分裂を起こしにくいウラン-238を核分裂性核種であるプルトニウム-239に転換する割合(転換比)をできるだけ高めるとともに、気泡が発生した場合に原子炉出力が自然に低下する性質(負のボイド反応度係数)を確保するため、燃料棒の稠密配置、炉心の短尺化、炉心内部への中性子吸収用ブランケットの設置など、色々な工夫を行いました。その結果、転換比が1以上すなわち消費した以上の核分裂性物質を炉内で生産できる沸騰水型炉(BWR)(図8-1)、現在の軽水炉で計画されているプルサーマル方式では困難なプルトニウムの多重リサイクルを可能とする加圧水型炉(PWR)(図8-2)、さらに、運転中に原子炉内で核分裂性物質が新たに生成される性質を利用して、運転期間の長期化と燃料の高燃焼度化により、設備利用率の向上や使用済燃料発生量の低減に大きく貢献できるBWR型炉(図8-3)など、色々な特長を有する複数の炉心概念を確立しました。
 今後は、軽水炉技術の限界に挑戦し、将来のエネルギー状況の変化に柔軟に対応できるよう、低減速スペクトル炉の設計を完成させるとともに、炉心概念の成立性を確認するための炉物理実験、安全性を確認するための熱流動実験などを実施し、低減速スペクトル炉の実用化を目指した研究を進めます。


参考文献

岩村公道他, 低減速スペクトル炉の研究, JAERI-Research 99-058 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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