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高温工学試験研究炉(HTTR)は、平成11年11月、環状の炉心で初めて臨界達成に到達しました(図9-1)。ここで、環状というのは、炉心の中央部は減速材である黒鉛のみで占められており、それを取り囲むように燃料が装荷されている状態を言います。炉心を環状にしておくと、万が一事故で冷却材のヘリウムガスが供給されなくなっても、制御棒を挿入するなどして、核分裂さえ止めることができれば、残留熱の径方向への逃げが良く、炉心温度はあまり上がらないので、能動的な安全装置に依存しない固有安全炉と言えるようになるという大きなメリットが生じます。そこで、これまでほとんど実炉では、経験のない環状炉心で初回臨界試験を試み、核特性データを取得しました。予測の16±1燃料カラムを越えて19燃料カラムで、臨界に到達しました。予測が実験をかなり下回った原因について見直しを行い、環状高温ガス炉固有の核的問題をいくつか発見して対処しました。燃料体の詳細モデル化や中央の黒鉛領域を通しての、燃料領域の結合効果の正確な評価が主要な問題でした。現在では、臨界燃料カラム数の計算と実験の不一致はかなり改善されました(図9-2)。
一方、HTTRの臨界試験では、反応度に関わる実験の手法を改良する必要のあることに早い段階から気がついていました。過剰反応度については、燃料カラムの増加に伴う反応度の増加は、実験を行っている現実の炉心ではなく、この反応度を打ち消すための中性子吸収体の添加がなされない仮想炉心について定義されるという修正法を提案しました。この提案により、制御棒間の干渉効果を合理的に取り入れられるようになりました。また、停止余裕については、制御棒落下実験について「遅れ積分計数法」を案出し、制御棒挿入時間が10秒程度になっても、精度の高い測定を可能にしました(図9-3)。以上の努力により、環状炉心の核特性を把握できました。 |
参考文献
藤本望他, 高温工学試験研究炉 (HTTR) の臨界試験,(II) 環状型燃料装荷による初臨界達成とその予測法, 日本原子力学会誌, 42(5), 458 (2000). |
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