9.2 強くて粘り強いセラミックス製制御棒


図9-4 高温ガス炉構造と制御棒位置及びC/C コンポジット製制御棒構造

高温ガス炉高温炉心に直接挿入でき、原子炉運転制御を容易にするとともに原子炉プラント効率の向上に寄与します。

 


図9-5 C/Cコンポジット製制御棒内筒に圧縮荷重を加えた際の荷重-変位曲線

黒鉛材料は、荷重のピーク点から急激な荷重低下を生じるが、この材料に炭素繊維を加え構造強化すると金属材料のような延びが出てきます。


 高温工学試験研究炉の制御棒被覆管は耐熱合金で製作されていますが、800℃以上の高温では機械的特性が劣化します。そこで、制御棒を高温の炉心に直接挿入することができず、炉心温度の低下を待って段階的に挿入する方式を採っています。このため、耐熱性高強度の炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)を用いて1,000℃以上の高温に耐える制御棒ができれば、制御棒の挿入操作が容易になるだけでなく、約1,000℃の核熱を供給する将来の高温ガス炉の制御棒にも利用できます。
 私たちは、C/Cコンポジット製高温ガス炉用制御棒の開発を進め、図9-4に示す制御棒被覆管の試作に成功しました。この制御棒被覆管は、個々の被覆管とそれらを連結する連結棒、固定ネジなどすべてC/Cコンポジット製です。C/Cコンポジット材料全体を高強度化するため、炭素繊維の含有率及び周囲、半径、長手各方向の繊維配分率を最適化して周方向及び長手方向の強度を強化するとともに、気相充填法(CVI)によりコンポジット炭素質の一部を炭化珪素化(SiC)しました。図9-5は、三次元的に強化した被覆管に圧縮加重を加えたときの変形の挙動を示したものです。黒鉛材料では、直線的に変形し、ピーク荷重以降急速破断を起こしますが、このC/Cコンポジットでは、強度がより高く、金属のような延性材料的な変形をしつつ、安定的な破壊を生じる特性が得られました。このような特性から、高温構造材料として耐熱金属材料以上に高い健全性、信頼性が期待できます。


参考文献

石山新太郎他, 高温ガス炉用C/Cコンポジット製高性能制御棒の強度実験, 日本原子力学会誌, 41(10), 1092 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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