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最も軽い元素である水素が、最も重い元素であるウランと並び、次世代エネルギーの主役になろうとしています。私たちは、原子力を利用する熱化学法という新しい水素製造方法を研究しています。図9-6にプロセスの構成を示します。吸熱的な化学反応を高温で、発熱的な化学反応を低温で行わせると、水を水素と酸素に分解できます。熱源には、高温が得られることからHTTRのような高温ガス炉が最適です。
このプロセスでは、ヨウ化水素の熱分解によって水素を製造しますが、分離膜を用いて反応の場から水素のみを連続的に抜き出すことができれば、反応を効率よく行わせられることが知られていました。しかし、反応条件が400℃程度と高温で腐食性の強い環境のため、従来の水素分離膜は使用できませんでした。私たちは、耐食性や耐熱性に優れたセラミック製の水素分離膜を作製し、高温下で水素とヨウ化水素を高度に分離することに成功しました。 図9-7は、水素とヨウ化水素の透過速度の比である分離係数と温度との関係を示したものであり、高温条件で水素がヨウ化水素に比べて数百倍速く膜を透過することを示しています。膜は、図9-8のような構造をしており、化学蒸着法(CVD)により多孔質アルミナ管の表面に緻密なシリカ層を形成させて作製しました。膜によるガス分離では、高い透過性と分離性が安定して得られることが求められます。CVD条件を適切に選ぶことにより、高い分離性を維持しながら、大きな水素透過速度を安定して発揮する膜が得られそうなこともわかってきました。この優れた水素分離膜を、水素の新しい製法の開発に役立てていきたいと考えています。 |
参考文献
G.J. Hwang※ et al., Separation of Hydrogen from a H2-H2O-HI Gaseous Mixture Using a Silica Membrane, AIChE J., 46(1), 92 (2000). ※博士研究員 |
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