10.1 感じるレンチ、マジックハンドで簡単、正確、コンパクトな遠隔操作技術


図10-1 割管疲労試験片チャッキング方法

決められた位置に上下試験治具と試験片を置き、トルク測定用ロードセルと組み合わせたトルクレンチで固定ボルト締め、試験機本体に試験片を装着する作業を、全てマジックハンドで行います。

 


図10-2 疲労試験結果

マジックハンドを用いて実施した割管の疲労実験結果は、標準試験法による結果とほぼ一致し、信頼性のあるデータを示しています。材料はジルカロイ2の未照射材です。

 


図10-3 各種材料試験用治具

割管疲労試験だけでなく、組立装置を用いて、三点曲げ、DCT(ディスクコンパクトテンション)、丸棒疲労試験もできます。

 


 原子炉などで照射された材料の機械的強度を知るには、さまざまな材料試験が必要ですが、材料自身が放射化され放射線を放出するため、コンクリート等で放射線を遮へいできる限られた空間で試験を実施する必要があります。そのため、試験装置を小型化しつつ、マジックハンドで操作可能な遠隔操作の容易さが求められます。
 高サイクル疲労試験装置は、軽水炉燃料被覆管から採取した割管試験片(薄肉八橋型)の疲労特性を求める目的で開発されました。本装置は、試験片を装着する組立装置(図10-1)と試験機本体からなります。従来、割管試験片を試験用治具に取り付ける際に試験片に無理な力をかけてしまい、試験結果がばらつく原因となっていました。しかし、マジックハンドで操作可能なトルクレンチに、トルク測定用ロードセルを装着したことで、試験片を歪ませることなく試験機に装着可能になり、通常に得られる疲労試験データと同等の試験結果を得ることができました(図10-2)。組立装置による同様な作業方法によって複雑な試験片の取付けを、本装置は精度よく簡単に行えるため、これまで実施されたことがない照射済被覆管の割管疲労試験の他に、試験用治具を交換するだけで通常の引張試験、破壊靭性試験など各種材料試験も実施できます(図10-3)。原子力施設用構造材料等の高経年化対応等における耐久性評価や耐放射線新材料の開発において、照射済み後の材料の機械的特性を試験する重要な装置になっています。


参考文献

M. Nishi et al., Development of PIE Techniques for Irradiated LWR Pressure Vessel Steels, JAERI-Conf 99-009, 119 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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