11.2 異なる放射線まとめて計測
   ―同時に、しかも、正確に―


図11-4 プラスチックシンチレータを用いた場合のホスウィッチ検出器のしくみ

 


図11-5 ZnS(Ag)/NaI(Tl)ホスウィッチに光学フィルターを組み合わせた場合の時間スペクトル

α線の信号とβ線やγ線等の信号には時間差が現れます。これを利用すると両者を区別することができますが、α線用のZnSシンチレーターの後ろに適当な光学フィルターを入れるとα線の信号をさらに遅らせることができ、より完全な分別が可能になります。

 


図11-6 改良された回転ドラム式モニター

トレイに受けた試料溶液を回転するドラムの表面に薄層として付着させ半回転後ドラム上部でα線を測定します。

 


 燃料サイクルバックエンドにおいて、溶液中のアクチノイド濃度や共存するFP濃度を同時にかつリアルタイムで非破壊測定する技術を確立することは、工程管理や安全性向上の観点から重要な課題となっています。アクチノイドからのα線と他の放射線をインライン的に同時計測するために、目的に適した各種ホスウィッチ検出器を開発しました。
 放射線には色々な種類があり、それらの放射線を検出する検出器にも様々なものがあります。そのような検出器の中には、2種類以上の放射線を同時に感知するものが多いのですが、感知した放射線のそれぞれについて放射線量を正確に計測することは非常に困難です。
 原研では、図11-4に示したように、色々なシンチレーターを組み合わせた複合検出器(ホスウィッチ検出器)を開発することによって、α線とβ線、γ線、あるいは速中性子といった組み合わせで、それぞれの放射線強度を正確に求めることができるようになりました。その際、図11-5に示したように、時間スペクトルの違いに着目してそれぞれの放射線を識別しますが、適当な光学フィルターと組み合わせることによって、α線の信号がさらに遅くなり、両者の分離がさらに改善されます。
 この検出器のもう一つの特長は、溶液状態のままでα線が計測できるようにしたことです。これによって、図11-6に示したようなアクチノイド溶液のフローモニタリングが可能となり、将来には光ファイバー等を使った遠隔モニタリングも可能になると期待され、その成果は海外でも注目されています。


参考文献

K. Yasuda et al., Development of Scintillation-Light-Transmission Type Phoswich Detector for Simultaneous Alpha- and Beta(Gamma)-Ray Counting, IEEE Trans. Nucl. Sci., 47(4), 1337 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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