11.3 どんな傷も見逃さない
―蒸気発生細管の安全管理技術向上を目指して―


図11-7 探傷プローブの基本構成

励磁コイルは平行四辺形平面コイルを用いています。磁束検出コイルには、パーマロイ線を軸にした差動型コイルを用いて、両者を組み合わせています。

 


図11-8 探傷プローブ外観

プローブの中央部に、図11-7の基本構成を円筒上に配置しています。

 


図11-9 探傷試験結果の例

外径22.23 mm、肉厚1.27 mmのパイプ(インコネル製)を検査した結果です。きずの深さが大きいほど検出信号は大きくなりますが、軸方向、円周方向とも良好な検出ができます。

 


 原子炉の中の蒸気発生器には多数の伝熱用の細いパイプが通っています。原子炉を長期運転しているとパイプの内面や外面に腐食や振動で微小な傷が生じるので、安全確保の上から早期に検査し発見することが重要です。従来の検査では、パイプの円周方向に入った傷については、検出感度が低く見逃しやすいという欠点がありました。そこで、傷の方向に左右されないで高感度に迅速に検査し発見する検出器(渦電流探傷プローブ)の開発を行いました。
 探傷の基本原理は、電磁誘導により生じた渦電流が傷で乱されるのを検出する渦電流探傷法です。探傷プローブの基本構成は、励磁コイルとして平行四辺形平面コイルを、また磁束検出コイルとして高透磁率の磁性材であるパーマロイ線を軸にした差動コイルを用いて、両者を組み合わせています(図11-7)。これらを円筒状に配置し、パイプに内挿可能なようにした探傷プローブを開発しました(図11-8)。このプローブは、コイルの構成が走査方向に対して斜めになっていることと、検出コイルが差動型になっていることが特徴です。これにより、軸方向、円周方向どちらの傷でも検出できるようになります。
 これを用いて、種々の欠陥付き模擬試験体を用いて基礎的特性を測定した結果、軸方向、円周方向の両者とも良好な検出感度が得られました(図11-9)。今後、より実際のプラントに近い条件で検出性能を試験し、性能の向上を図って行く予定であり、非破壊検査技術の向上が期待されます。


参考文献

N. Ebine et al, Development of an ECT Probe Having Exciting Coils in the Shape of Parallelograms, IOS Press, 12, 223 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2000
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