8.2 短パルスレーザー励起用緑色レーザーの高効率発生に成功
 


拡大図(20KB)

図8-3  結晶軸方向が直交した2個の非線形結晶による波長変換法

2個の非線形結晶を結晶軸が互いに直交するように配置します。第1の結晶から発生する変換波は第2の結晶を変換されることなく素通りし、また第1の結晶で変換されなかった入力波は第2の結晶でさらに変換されます。そして1/2波長板と1/4波長板、それに基本波の反射鏡2枚を組み合わせて、同様の操作を4回繰り返し、全体としての効率を高くします。


図8-4  効率のよい緑色レーザー光の発生

従来の方法に比べて大幅に変換効率が改善されます。しかも、変換効率が高いため、強い入力光は必要なく、結晶を破損することがなくなります。



原研で開発した世界最短パルスの100 TW(テラワット)Ti:サファイアレーザーを励起するためのポンプ用レーザーは、Nd:YAGレーザーの1064 nm基本波からKTP(KTiPO4)結晶などを用いて、緑色の第2高調波を取り出すものです。この波長変換の際のエネルギー変換効率は50%程度です。Ti:サファイアレーザーをより小型に、そしてさらに出力を高めるためには、基本波入力によって波長変換用結晶が破損しない範囲で第2高調波への変換効率を上げることが必要です。
私たちは新しい波長変換システム(4-pass quadrature arrangement)を考案しました。2個の変換用結晶をシリーズに並べ、第1の結晶で変換した高調波成分は第2の結晶では相互作用せず、また第1の結晶で変換しなかった入力基本波は第2の結晶で高調波への変換を行うように、2つの結晶の結晶軸方向を直角に配置したものです(図8-3)。このプロセスが4回繰り返されるように構成し、これによって入力基本波の強度76 MW/cm2(1064 nm, 607 mJパルス、10 Hz)の場合での第2高調波の出力パルス486 mJ、すなわち80%の変換効率を達成しました。



参考文献
H. Kiriyama et al., High Efficiency Second-Harmonic Generation in Four-Pass Quadrature Frequency Conversion Scheme, Opt. Commun., 174, 499 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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