研究の発端は、JCO臨界事故で重度の被ばくをした二人の作業者の臨床的な経過が部位ごとに異なっていたことでした。医療担当グループとしては、臨床的な経過と線量の対比が不可欠であり、詳細な線量分布の評価が必要となりました。
しかし、具体的に図1-7に示すような複雑な姿勢の特定部位の線量評価方法はと問われると、これまでは図1-8aのような腕のない“直立不動型”人体模型があるだけで、他に適用できる適切な計算方法はありませんでした。
この難問を引き受けた私たちは、“可動型”人体模型(図1-8b)を開発することによって見事に突破口を開いたのです。可動型にすることによってB氏のような姿勢はもとより、どんな複雑な姿勢でも容易に再現することが可能になり、まさに画期的な着想でした。次に、この人体模型を用いて、二人の作業者の実際の作業姿勢を正確に再現し、さらに、原研ならではの臨界・放射線輸送コードを組み込んだ精密な計算モデルを構築し、図1-9のA氏とB氏の中性子線とガンマ線混在場の全身皮膚の線量分布と、図1-10の中性子線とガンマ線による深部の線量分布を求めました。これらは、原子力技術が放射線の人体影響、治療法等の幅広い医療分野の発展に多大に貢献した成果といえます。 |