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ミリ波帯超大型電子レンジで世界記録達成
―ITER加熱装置の実現性をさらに確実に―




図3-9 周波数110 GHzのジャイロトロンと呼ばれる大出力のミリ波発振管、円形断面の特殊導波管の伝送路、電源・制御系等から成るJT-60用ミリ波帯高周波加熱装置(超大型電子レンジ:家庭用の約1万倍の出力)の主要部

100 GHz帯のジャイロトロンは、原研が世界に先駆けて、1 MWの大出力で長パルス、高効率での発振に成功する等、世界をリードしている最先端の技術領域です。


表3-1 電子加熱用高周波加熱装置の1系統当たりの性能表

加熱装置としては、同一のシステムをJT-60では4系統、ITERでは24系統使用します。



図3-10 周波数80〜170 GHzでの世界各国の高周波加熱装置の系統当たりのプラズマへの入射パワーとパルス幅の達成状況

JT-60での5秒入射により高周波加熱装置の主要機器の熱平衡を確認・評価し、ITERでの連続運転に向けた技術的見通しを得ることができました。(右上に行くほど技術的に難しい)




 JT-60でのプラズマ性能を向上する研究のために、プラズマ中の電子を加熱し、またプラズマ中に電流を流すことができる、世界最高性能の周波数110 GHzのミリ波帯高周波加熱装置(超大型電子レンジ、図3-9:ジャイロトロンなどから成る装置の主要部分の写真参照)を開発しました。
 世界各国の核融合装置におけるミリ波帯(周波数80〜170 GHz)での高周波加熱装置の1系統当たりのプラズマへの入射パワーとパルス幅を図3-10に示します。これまで、0.8 MWレベルでは装置を構成する主要機器での予想外の異常な加熱等により、パルス幅が0.6秒以下に制限されていましたが、今回世界最高パワーの0.8 MWで5秒の長パルスの高周波を入射するのに成功しました。
 同一のシステムがJT-60では4系統、ITERでは24系統使用されます。表3-1にその系統当たりの主要諸元を示しますが、系統当たりでは、ITERの設計値を上回る入射パワーを今回達成しました。ジャイロトロンの発振そのものの安定化対策、大電力のミリ波をITERと同規模の60 m長にわたり伝送する小口径の円形断面特殊導波管の最適化等の技術開発により、今回世界最高の成果を実現しました。同時に5秒入射により主要機器の熱平衡を確認し、評価した結果ITERでの連続運転への技術的見通しを得ることができました。
 JT-60のこの成果は、ITERで計画されているミリ波帯高周波加熱装置の実現をより確実にするものです。



参考文献
Y. Ikeda et al., The 110 GHz Electron Cyclotron Range of Frequency System on JT-60U:Design and Operation, Fusion Sci. Technol., 42, 435 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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