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ねじ山型フィンによる高熱流束の除去
―核融合炉ダイバータ用高性能冷却管の開発―




図3-11 核融合炉ダイバータ用冷却管

これまでダイバータなどの高熱流束機器の冷却管にはねじりテープを挿入し、冷却水を旋回させて伝熱効率を向上させるスワール管が使用されています。スワール管の欠点である圧力損失が高いことなどを改善すべく、冷却管内壁にねじ切り加工を施したスクリュウ管を提案しています。スクリュウ管では壁面のねじ山型フィンにより冷却水の混合が促進されます。また、冷却水の主流は直進するため、圧力損失の低減も期待できます。



図3-12 各種冷却管の入射限界熱流束のポンプ動力依存性

除熱性能の限界を示す指標の一つである入射限界熱流束のポンプ動力に対する依存性を調べた結果、スクリュウ管を使用することにより、平滑円管やスワール管と比較して、より低いポンプ動力で高い入射限界熱流束が得られることがわかりました。




 核融合炉のダイバータは真空容器内機器の中で唯一プラズマと接触するため、これまでの工学機器ではほとんど経験したことのない20 MW/m2以上の高い定常熱負荷を受けます。このような高い熱負荷を水冷却で除去するためには、水の状態変化、すなわち沸騰時の高い熱伝達率を必要とします。また、ダイバータの冷却管に採用されるには、高い除熱性能のみならず繰り返し加熱時の疲労破壊のデータが必要であり、これまで使用実績の多い、すなわち、疲労に関するデータの多い、スワール管(図3-11上)がITERダイバータに採用されています。しかし、スワール管ではテープの振動・脱落を防ぐため、冷間加工によるテープの管壁への工程など、製作工程が複雑であることや、圧力損失が高いことなど改善すべき点があります。そのため、冷却管内壁に加工が簡単なねじ切り加工を施したスクリュウ管(図3-11下)の使用を提案しています。このスクリュウ管では、管壁近傍の冷却水の混合をねじ山型フィンにより促進し、除熱性能を高めると共に、圧力損失の低減が期待できます。
 沸騰による除熱には、相変化を利用するため、これ以上熱負荷を除熱できない限界点が存在します。この熱負荷の値を入射限界熱流束と呼び、冷却水の流量に強く依存します。一般に高い入射限界熱流束を得るには、冷却水流量を増加させますが、圧力損失が大きな冷却管では冷却水を供給するために必要なエネルギー、すなわちポンプ動力がふえてしまいます。このような観点からスクリュウ管の除熱性能を確かめるために行った実験結果を図3-12に示します。種々の形状の冷却管を試作した結果、ネジ山形状M10のスクリュウ管を使用した場合、40 MW/m2の入射限界熱流束を得るのに必要なポンプ動力は従来のスワール管(内径7 mm、テープねじり比3)の40%以下に低減することができることがわかりました。これまでの実験により、スクリュウ管という、より低いポンプ動力で高い除熱限界が得られる高性能な冷却管を開発することができました。引き続き、冷却管としての信頼性を確証するため、繰り返し加熱時の疲労破壊に関するデータを取得する予定です。



参考文献
J. Boscary et al., Critical Heat Flux in Subcooled Water Flow of One Side Heated Screw Tubes, Fusion Technol., 35, 289 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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