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水の放射化を用いて核融合出力を測る




図3-13 原研FNSにおける水の放射化を用いた中性子モニターの実験配置

FNSの模擬ブランケットに水ループを設置し、水の放射化量から中性子量を測定することができます。



図3-14 パルス状中性子に対するガンマ線検出器の計数

時間分解能0.05秒が得られました。



図3-15 ITERにおける水の放射化を用いた中性子モニターの照射端の取付け位置

照射端は真空容器内面に取付けられる遮蔽ブランケットモジュールの間のフィラーモジュール内に挿入されます。




 14 MeV中性子が水に当たると16O(n,p)16N反応により16Nが水の中に生成されます。16Nは半減期7.13秒で6.13 MeVと7.12 MeVの高エネルギーガンマ線を放出するので、核融合炉のブランケット近傍に水ループを設置し、水の放射化量を測定することでプラズマからの中性子量を測定することができます。放射化した水はリザーバタンクで2〜3分間滞留させると放射能は無視できるほど小さくなりますので、再使用することができ、完全な気閉ループとなります。中性子発生量は核融合出力に比例しますので、水の放射化量から核融合出力を測定できることになります。
 ITERにおける照射端(水ループで最も中性子照射を受ける部分)の中性子エネルギースペクトルを模擬するため、核融合中性子源FNSにおいて図3-13のように模擬遮蔽ブランケット体系内に水ループを挿入し、約10 m離れた位置で、16Nからのγ線を測定しました。ここでγ線検出器としては、高いエネルギーのγ線測定に適したBGO(Bi4Ge3O12)シンチレーション検出器を用いています。0.01秒のパルス幅で中性子を発生させ、γ線検出器の計数率の時間広がりから時間分解能を評価しました。その結果、図3-14に示すように流速約10 m/秒で、0.05秒の時間分解能が得られ、0.1秒以下というITERの要求仕様を満足することを確認しました。また時間分解能の流速依存性を調べた結果、時間分解能は水の乱流拡散で説明でき、照射端からγ線測定器までの輸送時間に比例することを見い出しました。
 この実験結果に基づき、水の放射化を利用したITER用中性子モニターの設計を行いました。照射端は図3-15に示すようにフィラーモジュール(遮蔽ブランケットモジュール間のくさび型遮蔽体)内に真空容器を貫通して挿入する構造としました。ガンマ線測定ステーションは生体遮蔽外のピットに設置し、照射端からの距離は20 mとしました。この配置によると時間分解能は水配管に沿った放射化反応の分布および乱流拡散を考慮して、10 m/秒の流速に対し時間分解能0.1秒以下となることを示しました。なおこの水の放射化を利用した中性子モニターはITERの中性子モニターの一つとして、ITERの設計に採用されています。



参考文献
T. Nishitani et al., Fusion Power Measurement Based on 16O(n,p)16N Reaction in Flowing Water, J. Nucl. Sci. Technol., Suppl. 2, 1139 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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