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周期表104番元素ラザホージウムの性質は?
―超アクチノイド元素の化学的性質を明らかにする―




図4-3 元素の周期表

104番元素のラザホージウム(Rf)は周期表のジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)と同じく第4族の性質が期待されています(赤い四角内)。



図4-4 ラザホージウム、ハフニウム、ジルコニウムの塩酸溶液中でのイオン交換樹脂に対する吸着率

塩酸濃度が高くなるにしたがって、吸着率が大きくなっています。この傾向は、ジルコニウム、ハフニウムが属する周期表第4族元素に典型的な挙動です。



図4-5 自動迅速イオン交換分離装置の概略図

短い半減期のラザホージウムを迅速かつ繰り返し取り扱うために、数百マイクロリットルという極端に少ない溶液で効果的な分離が行えるように、直径1.6 mm、長さ7 mmの超小型カラムを20本備えたカラムマガジンを2セット中央に配置しています。




 周期表はどこまで続くのだろうか? 超重元素などのアクチノイドを超える元素はどのような化学的性質を示すのだろうか? 化学の原点ともいうべき新しい元素の発見やその化学的性質の研究が、世界の核・放射化学研究者により、最近活発に行われています(図4-3)。
 その研究の対象が原子番号104以上の超アクチノイド元素と呼ばれる元素です。このように重い元素は自然界には存在しないので、加速器を使って人工的に合成されます。合成される原子の数は、1分間に数個ないしはそれ以下で、しかも安定に存在することはできず、数十秒ないしはそれより短い時間で放射線を放出して崩壊してしまいます。このため元素の性質を調べるためにはたった1個の原子を対象に、すばやく分離分析しなければなりません。このため超アクチノイド元素の化学的・物理的性質は未だにほとんどわかっていません。
 私たちは、104番元素ラザホージウムの溶液中での化学的な振る舞いを観測し、周期表上の位置を明らかにしました。実験ではキュリウム元素に、加速した酸素イオンを衝突させて半減期78秒のラザホージウム同位体(261Rf)を合成しました。そして1分間に約2個の割合で生成する原子を、エアロゾルと呼ばれる微粒子に付着させて数秒のうちに化学実験室へと移送し、新たに開発した実験装置(図4-5)でイオン交換分離という手法を用いて迅速に化学的挙動を観測しました。この分離手法では迅速性を高めるためにわずかな溶液量で効果的な分離が行えるように超小型の分離カラムを用いています。1回の化学分離を約20秒で終えることができ、崩壊に伴う放射線の測定は約1分で始めることができます。
  ラザホージウムの化学的性質を詳しく観測するためにこの分離分析を繰り返し数千回も行い、図4-4のような結果を得ました。この図からわかるように、私たちはラザホージウムの化学的性質が周期表第4族のジルコニウムやハフニウムに非常に良く似ていることを初めて明らかにしました。この結果はラザホージウムが周期表の第4族に位置する元素であることをはっきりと示すものです。



参考文献
H. Haba* et al., Anion-Exchange Behavior of Rf in HCl and HNO3 Solutions, J. Nucl. Radiochem. Sci. 3, 143 (2002)., *博士研究員

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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