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電子の第3の自由度「軌道」が整列すると?
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物質に磁場をかけると、ローレンツ力によって電子の軌道が曲げられるので電子は流れにくくなり、一般に、電気抵抗は大きくなりますが、磁場の印加によって抵抗が減少する「負の磁気抵抗現象」が生じることがあります。とりわけ、マンガン酸化物においては、数テスラという僅かな磁場によって抵抗が何桁にもわたって急激に減少する負の超巨大磁気抵抗現象が見られ、高密度磁気記録装置ヘッドなどへの応用が期待されています。 この超巨大磁気抵抗現象を巡っては、数多くの研究がなされてきましたが、電子の持つ3つの自由度、すなわち、電荷、スピン、軌道の自由度の制御が重要であることが明らかになってきました。とくに注目されたのが、軌道秩序、すなわち、電子が異なる軌道を占有しながら空間的に局在する現象です。軌道秩序はこれまで、2つの軌道を持つマンガン酸化物において盛んに研究されてきましたが、最近、3つの軌道(xy、yz、zx)を有するルテニウム酸化物においても、軌道秩序の可能性が理論的に予言されています。図4-6(a)における反強磁性軌道秩序相(黄色の領域)がそれにあたり、このときの軌道秩序は、(b)に示すように、3つの軌道によって構成される美しい幾何学的模様となります。 このような軌道秩序は、超巨大磁気抵抗物質において、なぜ負の磁気抵抗が超巨大になるのか、という素朴な質問に答えてくれます。たとえば上図(a)において、絶縁体である反強磁性軌道秩序相と金属である強磁性軌道無秩序相が隣接していますが、この境界領域においては、僅かな磁場で反強磁性から強磁性への転移が起き、それに伴って絶縁体金属転移が生じることになります。これが究極の超巨大磁気抵抗現象であり、それを影で支えているのが軌道秩序であると言うことができます。 |
●参考文献 T. Hotta and E. Dagotto, Prediction of Orbital Ordering in Single-Layered Ruthenates, Phys. Rev. Lett., 88, 017201 (2002). |
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