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中性子散乱長の精密測定
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中性子は、磁気感受性や物質透過能が大きい等の特徴を持ち、物性研究の手段として非常に有益であることはよく知られています。その際、物質(の原子核)と中性子との相互作用の強さを表す“散乱長”という基礎的で重要な量は、物質の種類(元素)のみでなく、同位体によっても大きく異なるのが特徴です。これが、類似のプローブであるX線や電子線と相補的な研究手段となる所以です。しかし、この散乱長は実測でしか求められないのが実情です。 私たちはこの量を、振動除去・精密温調・高S/N 比に配慮した世界唯一の専用装置で、干渉計法により測定しています。干渉計法によると、波動としての中性子が物質中を通過する際、位相の変化を受けることを利用しているので、従来の方法よりはるかに高精度で信頼できるデータが得られます。図4-11に、中性子干渉計実験の様子を示します。ある角度で入射した中性子線束の主要部は、図のように2つの経路を経て、3枚目の反射板で再び重ね合わされ、干渉します。このとき一方の経路に試料を入れると、両経路の中性子波の間に位相差が生じます。そこで試料を少しずつ回転させると、実効的な試料厚さが変化し、従って両経路の位相の差が変化し、検出器で測定した強度は系統的に変化します(図4-12)。これを解析して、散乱長の値が容易に、しかも高精度で得られます。 私たちはこれまでに、幾つかの元素や同位体について散乱長の値を得ています(表4-1)。中でも、次世代中性子源のターゲット材とも目される水銀の同位体 Hg-202 を世界で初めて測定し、高精度のデータを得たことは特筆すべき成果と言えます。その他、同位体 Ga-69、 -71、Cu-63、-65や天然組成元素 Al、Nb、Cu、Hg、W 等を測定し、従来データブックに収載されている値より一桁ないし二桁精度の高い値を得ています(表4-1)。 |
●参考文献 H.Tomimitsu et al., Measurement of Coherent Neutron Scattering Length with LLL-Type Interferometry at PNO in JRR-3M, J.Phys. Soc. Jpn., 70 (Suppl. A), 462 (2001). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002 Copyright(c) 日本原子力研究所 |