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放射性ヨウ素-129の迅速・高感度定量に成功 |
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放射能汚染で最も問題となる放射能は、揮発性があり甲状腺に溜まりやすい性質を持つ放射性ヨウ素ですが、汚染を引き起こす放射性ヨウ素はすぐに通常の物質に変わるため、もともと自然界に存在している物質と全く区別ができなくなります。このことが放射能汚染事故などで、その汚染程度の定量を困難にしています。 放射性ヨウ素-129は、半減期が1570万年と極めて長いため、ヨウ素-131やヨウ素-133の放射性物質による環境汚染の指標となります。これは事故などによる短期的な汚染の指標となるだけでなく、核実験や再処理からもたらされる長期的な汚染の指標にもなります。しかし、環境中の放射性ヨウ素-129の濃度は一般的に非常に低いため、自然界にもともと存在する放射能との峻別測定が極めて困難でした。放射化学的手法により妨害核種を取り除くことによって、ヨウ素-129の測定は行われていましたが、複雑な作業と作業者の大量の被曝を伴うために、高感度で実用的な定量法が求められていました。 多重ガンマ線検出法は物質科学研究部で開発したガンマ線同時計数を基にした手法であり、複数のガンマ線検出による分解能の相乗効果から、従来の1台の検出器を使った放射化分析法と比べると約1000倍の精度で分析が可能です。多重ガンマ線検出装置GEMINI(図6-1)を用いてヨウ素-129の定量を行うことによって、ヨウ素-129の定量限界が安定同位体ヨウ素-127に対して、10−13という極微量まで放射化学的手法を用いずに達成することを実証しました(図6-2)。海藻中のヨウ素の分析を行った結果、東海村近海では北海道産昆布と同レベルで、安定同位体ヨウ素-127に対するヨウ素-129の比が3.5×10−10であり、自然界レベルであることが判明しました。 ヨウ素の迅速、高感度定量に成功したことで、例えばヨウ素-129の長半減期を利用して海底に眠る新エネルギー源メタンハイドレートなどの試料および鉱物試料の1000万年オーダーでの年代測定が実用レベルで可能となり、地球科学および資源開発といった学術、産業応用が期待されます。 |
●参考文献 Y. Toh et al., Isotopic Ratio of 129I/127I in Seaweed Measured by Neutron Activation Analysis with Gamma-Gamma Coincidence, Health Phys., 83(1), 110 (2002). |
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