原研FELは、従来より1桁以上大きな電荷量、千倍以上長いパルス幅により、平成12年2月に世界最高平均出力である2.34
kWを達成しました。その後、平成12年から同13年に図8-3に示すように、新たに開発した自己相関法による極短パルス幅計測と図8-4に同様に示すように外部レーザー同期による高精度共振器間距離計測、すなわちデチューニング特性計測により、電子ビームとレーザー光が完全同期状態で255
fs/3.4サイクル発振の極短パルス、6〜9%の高効率、約1
GWの高ピーク出力、2 kW以上の高平均出力、22ミクロン赤外領域における波長可変性等が同時に実現できることを確認しました。
この波長可変、極短パルス、高効率、高ピーク出力かつ高平均出力の同時達成は、超伝導リニアックにより初めて実現された長パルス動作と大電荷量ビーム加速によりもたらされたもので、理論予測を大きく越える新規で強力な高輝度の発振状態が実現されました。いままでは、平均出力とピーク出力は逆比例的な関係にありました。今後、この新しい発振動作原理にもとづく超伝導リニアックFELは、他のあらゆるレーザー、非可干渉性光源では不可能な同時に高い平均出力と高いピーク出力を実現できる強力で特異な性能により全く類例のない新しいレーザーの応用分野を切り開くものと考えられます。例えば、この極短パルス、高ピーク/高平均出力、波長可変であるFELを用いて、ファイバー通過可能な波長で高出力発振させて、原子炉圧力容器、格納容器を2次汚染無く高速切断する事が可能となります。大規模光化学反応による単一同位体材料等の原子力新材料生産や新物質創生に必要な100
kW級のコンパクトな波長可変レーザーや、NOx、PCB類をはじめとする環境有害物質を超高感度で検知して分解・無毒化する技術、レーザーメスの医療への利用などがすぐにでも実用化すると考えられます。また、波長が短い領域でも発振が容易になることから、波長1ÅのX線光源の開発進展にも貢献し、これを利用すれば、医薬品への応用や生命活動を解き明かす上で必要不可欠な蛋白質立体構造の超高速解明に威力を発揮することが期待されます。 |