こんにゃくは、でんぷんやセルロースと同じ仲間の天然高分子(多糖類)で、微生物により分解される生分解性の特性をもっています。乾燥状態では粉末ですが、水と炭酸カルシウムを加えると速やかに数百倍もの水を含み膨張し、“ゲル”といわれる状態になります。
このような高い吸水性は、こんにゃくが水分子になじみやすい分子構造をもつためです。ゲルは一定の形状を保つことができますが、分子鎖間に共有結合がないため簡単にち切れてしまいます。
しかし、ち切れない丈夫なこんにゃくができれば、その生分解性の特性が相乗され、衛生用品や農業資材等への幅広い利用が期待されます。
そこで私たちは、セルロースやでんぷんを用い丈夫なゲルをつくる研究を重ねてきました。その結果、でんぷんにカルボキシメチル化したセルロースおよび水を加え、ペースト状にした状態で放射線を照射すると、分子の間に部分的に結合、すなわち、橋かけが起き、弾力性のあるゲルが得られることを見出しました。セルロースおよびでんぷんは従来、放射線の照射を受けると分子が分解されると考えられておりましたので、これは全く画期的な発見でした。
図9-4に放射線を照射するときの、水の添加率とゲル分率の関係を示します。ゲル分率とは、橋かけが起きて水に溶けなくなった割合です。水の添加率が40%〜50%域で橋かけが最も起こりやすいことがわかります。
橋かけは分子のからみ合いより強い結合です。このため橋かけしたでんぷんやセルロースはち切れず押しても形が崩れず、ゴムのような弾力性をもつことがわかりました。このような特性を持っていれば、十分衛生用品や農業資材等に使うことができます。図9-5の上は照射した直後、下は水を添加した後の写真です。水の添加により体積が何百倍も増加したことがわかります。また、製造プロセスも極めてシンプルです。すなわち、水を加えて練ってペースト状にしてポリエチレンの袋に詰めた後、放射線を照射すれば完了です。
今後、高吸水性と弾力性さらに生分解性の三拍子そろった材料として衛生・農業分野・環境保全用材料として幅広い利用の展開も図っていきたいと考えます。 |