11-1

高性能セラミックス皮膜の開発に成功




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図11-1 JMTRでの核融合炉ブランケット照射試験の概念図

ブランケット照射試験で生成されるトリチウムの生成・回収特性を精度良く測定するためには、試験容器壁からのトリチウムの透過量を極力低減する必要があります。



図11-2 トリチウムの透過低減皮膜の施工技術開発

化学緻密化法による酸化クロムを主成分とするセラミックス皮膜施工技術を開発し、重水素による試験の結果、ガラス化材の添加が、透過量低減により効果的であることを明らかにしました。



図11-3 重水素による透過試験結果

ガラス化材を添加したセラミックス皮膜の施工により、600℃で重水素透過量を、何ら皮膜を施さない場合の約1/1000に低減することに成功しました。




 核融合炉ブランケット開発の一環として、ブランケットで生成されるトリチウム(以下「T」という)の生成・回収特性を把握するため、JMTRにおいてブランケット照射試験を実施する予定です(図11-1)。
 Tは透過性が高いため、通常のT増殖材充填容器壁材では、生成されたTが照射試験体内へ透過してしまい、特性測定の精度に問題が生じます。試験容器壁からのTの透過量を極力低減するため、酸化クロム(Cr2O3)を主成分とする、緻密で高温に耐えるセラミックス皮膜の施工技術として「化学緻密化法」を開発しました(図11-2)。
 本皮膜のT透過低減性能の評価試験は、Tより分子量が小さく化学特性が同じ水素同位体である重水素(以下「D」という)により行いましたが、結果は600℃で皮膜のない場合の約1/50でした。さらに、酸化クロムにガラス化材であるリン酸クロム(CrPO4)を添加することにより、D透過量を600℃で皮膜がない場合の約1/1000に低減することに成功しました(図11-3)。本セラミックス皮膜は、剥離しにくく、優れた耐熱性も有しています。
  本技術の施工により、Dより分子量の大きいTでは、同等またはそれ以上の透過量低減が期待でき、JMTRでのブランケット照射試験におけるT透過低減対策および生成・回収特性の測定精度向上に目処が得られました。
 さらに、本技術は、将来の核融合発電ブランケット構造材への適用による生成Tの効率的な回収やT処理設備の最適規模設計に寄与できると考えられます。また、水素脆化により短期間での交換を余儀なくされている石油精製プラント配管等への活用で、稼働率の向上・設備の長期耐用等の波及効果が期待できます。



参考文献
M.Nakamichi et al., Characterization of Chemical Densified Coating as Tritium Permeation Barrier, J. Nucl. Sci. Technol., 38(11), 1007 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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