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外部電流駆動だけで超高温プラズマを立ち上げて維持する
―核融合プラズマの連続運転に一歩前進―




図2-1 中心ソレノイドコイル(CSコイル)を用いた誘導電流による断続運転(従来のトカマク運転方式)



図2-2 高周波入射、中性粒子ビーム入射および自発電流を用いた連続運転可能な新しい運転方式



図2-3 実験で得られた電子温度・イオン温度・プラズマ電流の空間分布

プラズマ中心部にプラズマ電流がほとんどない「電流ホール」が形成されています。




 トカマク型核融合装置では、プラズマを取り囲むコイルが作る磁場とプラズマ中に流す電流(プラズマ電流)が作る磁場により、らせん状の閉じ込め磁場を生成し、数億度の超高温プラズマを閉じ込めています。従来のトカマク運転では、装置の中心部に設置されている中心ソレノイドコイル(CSコイル)に流れる電流(1次側電流)を時間的に変化させ、電磁誘導によってプラズマ電流(2次側電流)を発生させていました。しかし、このような誘導運転ではCSコイルに流すことができる電流に上限があるため、プラズマを断続的にしか維持できません(図2-1)。
 そこで大型トカマク装置JT-60を用いてCSコイルを用いずに、完全非誘導でプラズマ電流を立ち上げプラズマを維持する運転手法の開発を進めました(図2-2)。これは、図に示しましたように、高周波の入射と位置制御用コイルのみ使用して、プラズマを生成し、プラズマ電流を立ち上げ、それに高パワーの中性粒子ビーム入射を行うという手法です。ビーム入射によってビーム電流が発生すると同時に、プラズマが高温に加熱されます。プラズマが高温になると、中性粒子ビームや高周波がプラズマ電流を発生する際のエネルギー変換効率が良くなります。また、高温プラズマ中に生じる大きい圧力勾配により、プラズマ中に自然に電流が発生(自発電流)するようになります。
 以上の方式で研究を進めた結果、完全非誘導で7 千万度の高温プラズマ(図2-3)を生成・維持することに成功しました。このプラズマは自発電流が全プラズマ電流の90%を占め、将来の核融合発電炉の目標値に相当する高い閉じ込め性能を有するもので、核融合プラズマの連続運転に、この運転手法を適用できる見通しを得ました。



参考文献
Y. Takase et al., Formation of an Advanced Tokamak Plasma without the Use of Ohmic Heating Solenoid in JT-60U, Proc. 19th IAEA Fusion Energy Conference, Lyon, 2002, IAEA-CN-94/PD/T-2.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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