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プラズマ回転が不安定摂動を減衰
―回転とプラズマ形状が生み出す相乗的な安定化効果―




図2-9 ドーナツ型のプラズマを切ったところ



図2-10 プラズマ回転の有無による、バルーニング不安定性摂動エネルギーの時間発展の違い(αは、(a)(b)それぞれについて安定/不安定な値を選びました)

プラズマ差動回転が摂動エネルギーの減衰を引き起こします。この減衰が成長を相殺し、バルーニング不安定性を抑えます。



図2-11 プラズマ断面形状効果を表す模式図(成長フェーズの違いがわかりやすいよう誇張しています)

プラズマ断面形状をD 型にすることにより、(1)成長フェーズでの摂動エネルギー増加率を小さくし、また、(2)成長する時間を短く出来ます。つまり、プラズマ差動回転と形状効果は相乗的な安定化効果を生み出します。




 核融合炉の実現には高圧力のプラズマ閉じ込めが必須です。磁場でドーナツ型(トーラス)に閉じ込められたプラズマには、プラズマ側から見て磁場曲率が凹になるトーラス外側(悪い磁場曲率領域)を膨らませ易い性質があります(図2-9)。圧力勾配がある閾値を超えると、膨らみが時間的に増大する“バルーニング不安定性”が起こります。この不安定性がプラズマ保持性能を悪化させる危険があり、精力的に研究が行われてきました。
 これまでに、力学的平衡状態でプラズマ回転がないとしたバルーニング不安定性の理論が確立されました。また、実際にはプラズマが回転していることを反映した研究も進められ、回転がバルーニング不安定性を安定化し、圧力勾配の閾値を上げることが明らかにされました。しかし、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。
 そこで、私たちは数値トカマク研究(NEXT)計画の一環として、プラズマの力学的平衡からのずれ(摂動)の時間発展を記述する方程式を数値的に解き、以下のことを明らかにしました。
 プラズマが回転していない場合、摂動エネルギーは減衰しませんが(図2-10(a))、プラズマが回転、特に差動回転していると、周期的な減衰が起こります(図2-10(b))。この減衰が、悪い磁場曲率に対応した成長を相殺し、バルーニング不安定性を安定化していると考えられます。
 また、プラズマ断面形状をD 型にすれば、(1)成長フェーズでの摂動エネルギー増加率を小さく、また、(2)成長する時間を短く出来ます(図2-11)。どちらも、D型化が悪い磁場曲率領域を相対的に減らすからです。このように、D 型化とプラズマ差動回転は相乗的な安定化効果をもたらします。
 実験的にも、D 型化は高圧力プラズマ閉じ込めの鍵とされていますが、本研究はD 型化とプラズマ回転が共存・協調することを理論的に明らかにしたものです。



参考文献
M. Furukawa et al., Geometrical Improvements of Rotational Stabilization of High-n Ballooning Modes in Tokamaks, Nucl. Fusion, 43, 425 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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