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電流ホールを持ったトカマク・プラズマの平衡配位を解明する




図2-14 軸対称な3つの磁気島を持ったトカマク・プラズマの平衡配位

プラズマの中心部にR方向に間隔r1で3つの磁気島が並び、z方向2箇所(±z1の位置)にX点を持った磁場の構造を考えます。
中央の磁気島には負方向の(トカマクの電場と逆向き、青で表示)、左右の2つの磁気島には正方向の(赤で表示)小さい電流(トカマク全体の電流に比べて遥かに小さい)が流れています。3つの磁気島が電流ホールに対応し、その周辺部には大きな自発電流(高温プラズマ中に自然に生ずる電流)が流れています(濃い赤で表示)。電流分布図を参照。
このような配位がJT-60で示された電流ホールを持ったトカマク・プラズマの平衡と、その安定性を説明するものと考えられます。標準型トカマクの平衡配位は、左の図のようになっています。




 JT-60 では“逆シア型”とよばれる特殊な形のトカマク磁場による最近の実験で、従来の概念に反して、プラズマの中心部にほとんど電流の流れていない、“電流ホール”の存在する状態でも、高性能のプラズマを安定に閉じ込め得ることを実証しています。
 そこで従来知られていなかったこのようなトカマク・プラズマがなぜ安定に存在し得るのかについて理論的検討を行いました。その結果、閉じ込め磁場の構造が、標準的なトカマクのように磁気面(磁力線によってつくられるドーナツ型の面構造)が同心状に重なり合った形ではなく、図2-14 に示すように、プラズマの中心領域に軸対称な3つの磁気島を持った特殊な構造が形成されるものと考えれば、実験結果を説明できることが判りました。磁気島は閉じた磁力線に囲まれた局所的な領域で、プラズマの磁気流体的な運動の乱れに伴って局所的に磁場の変形が生じる複雑な過程をへて形成されます。この新しい構造は、3つの磁気島の電流(プラズマ全体の電流に比べて遥かに小さい)間に働く力やこれらの電流と外部の制御コイルのつくる磁場との間に働く力などによって位置のバランスが保たれ、磁気島中の電流が制御コイルの電流に比べて小さい限り十分に安定な釣合い(平衡)状態にあることが示されました。理論的な安定性の指標値は、実験結果と矛盾がないことを示しています。
 JT-60 で実際にこのようなプラズマの平衡状態が存在しているかどうかは、電流ホールの領域でプラズマの密度や温度の分布が平坦でないことなどを確かめることで検証可能と考えられます。



参考文献
T. Takizuka, Axisymmetric Tri-Magnetic-Islands Equilibrium of Strongly-Reversed-Shear Tokamak Plasma: An Idea for the Current Hole, J. Plasma Fusion Res., 78(12), 1282 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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