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先端ミラー無しで高周波ビームの入射方向が可変!
―遠隔駆動型先進アンテナの原理実証に成功―




図2-16 ミリ波帯高周波アンテナの概念図

プラズマに直面する可動ミラーを用いて高周波ビームの入射角度を変える従来型(上図)と、後方に設置する可動ミラーにより高周波ビームの入射角度を変える遠隔駆動型アンテナ(下図)。



図2-17 遠隔駆動型アンテナの原理

角形導波管の入口面(A)での高周波ビームの波面は導波管長さL を調整し、出口面(B)で再現します。Lは導波管断面サイズ、高周波ビームの周波数、入射角度によって決まるが今回の実験ではL=4632mm としました。



図2-18 遠隔駆動型アンテナ(写真)とガウス分布状高周波ビームの放射分布(左図)

設定した入射角度(0°、5°、10°)と同じ角度及び方向に、ガウス分布状ビームが放射されることを実証しました。




 核融合プラズマの加熱電流駆動や制御に必要なミリ波帯大電力高周波を入射するアンテナでは、プラズマに直面する可動ミラーによって入射角度を制御することができます。JT-60やITERではこの方式を採用していますが、高エネルギー中性子がITERの10倍以上発生する核融合炉では、動部を持つ可動ミラーの耐中性子性に難点があることから、この先端の可動ミラーが不要な遠隔駆動型先進アンテナ(図2-16)の開発を進めています。
 このアンテナは、断面が角形のコルゲート導波管(導波管内壁に軸方向に対して直角方向に規則的な溝を持つ)と導波管入口側、すなわちプラズマから離れた位置に設置する可動ミラーから構成されます。ある角度を持ったガウス状高周波ビームが角形コルゲート導波管に入射されると、その導波管中では複数の波が励起され伝搬して行きます。角形コルゲート導波管の長さを伝搬する波と波の位相差が2πの整数倍となるようにすると、導波管出口における合成された波が入口と同一の状態に戻ります。つまり、導波管出口から入射と同一角度、同一方向にガウス状高周波ビームの放射が理論的に可能となります(図2-17)。その原理実証を目的として遠隔駆動型アンテナを試作し(図2-18)、大電力ミリ波(パワー0.5MW、周波数170GHz)放射実験を行いました。
 ガウス分布状高周波ビームの角形コルゲート導波管への入射角度を0°、5°、10°としたときの放射分布を図2-18に示しますが、入射角度と同じ角度及び方向にガウス分布状ビームが放射されることを確証しました。また、導波管内での高周波パワーの損失は5%以下となり、低損失のあることも確認し、遠隔駆動型アンテナの大電力試験による原理実証に成功しました。本成果は、遠隔駆動型アンテナの実用性を示すものであり、核融合炉用のミリ波帯高周波加熱アンテナの実現に向け新たな、かつ着実な一歩を踏み出したと言えます。



参考文献
K. Takahashi et al., High Power Experiments of Remote Steering Launcher for Electron Cyclotron Heating and Current Drive, Fusion Eng. Des., 65(4), 589 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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