核融合炉では、炉室に大きなスパンを必要とするので、構造上の制約から、天井の遮蔽厚は、垂直の壁に比べて薄くせざるを得ません。核融合炉の放射線線量の評価では、スタックから排出される放射性ガスによる寄与が最も大きいですが、それを除いた外部線量としては、核融合炉の天井から漏洩した放射線が空気と散乱して、施設周辺の地上に到達する、いわゆるスカイシャンが、核融合炉周辺の放射線安全に最も重要な項目です。
そこで、D-T 中性子がどのような過程を経て地上に到達するか、2次ガンマ線がどのような過程で発生するかを調べるために、原研FNS の第1ターゲット室の天井に設置してあるスカイシャイン実験孔(約1m ×1m、1m 厚)の遮蔽コンクリートプラグを開放してD-T 中性子を直接空中に打ち上げ、施設周辺のスカイシャイン中性子とガンマ線を測定しました(図2-25)。
ターゲットから最大550m位置までの範囲で、中性子線量率を積分型レムカウンタを用いて測定し、2次ガンマ線については、大型NaI(Tl)シンチレーション検出器とゲルマニウム半導体検出器で測定しました。測定した中性子と2 次ガンマ線の線量率の分布は、モンテカルロ計算コードMCNP-4B と核データJENDLE-3.2 を用いた計算結果と比較した結果、非常によく一致することがわかり、モンテカルロ計算がD-T 中性子のスカイシャインにおいても十分な予測精度を有することが、確認できました(図2-26)。
また、2次ガンマ線のエネルギースペクトルでは、1H(n,γ)の線スペクトルの他に、56Fe(n,γ)と28Si(n,γ)の線スペクトルを観測し(図2-27)、スカイシャインの2次ガンマ線がこれまで言われているような空気による中性子の散乱/吸収で発生するのでなく、減速した中性子が建物または地表に吸収されて発生することを示唆する結果を得ました。 |